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備忘録 | 23年4月

(できれば毎月)残していきたい備忘メモ。基本は月々の振り返りになるけれど、詳しく記すというより、あくまでメモのようなものとして。

劇場鑑賞 映画

『トリとロキタ』

監督:ダルデンヌ兄弟

一般的に想像される「アクション映画」とは異なるが、ダルデンヌ兄弟は間違いなく現代における最高のアクション映画作家だ。そして『トリとロキタ』はそれを改めて確信させる傑作だった。
本作はヨーロッパにおける移民の苦難を描いている点で『イゴールの約束』(1996年)とも似ているが、一番の違いはトリとロキタの対比によって移民のあいだにも格差があることが強調された点だろう。そして2人を決定的に分かつ一番の特徴が「運動の力」だった。
その卓越した運動能力・機動力によってあらゆる境界線をやすやすと踏み越えていけるトリと、さまざまな障害に阻まれ境界線を越えられないロキタ(ロキタはメンタルヘルスに問題を抱えているため運動が強制的に停止してしまう場面もある)。2人の対比によってダルデンヌ作品の持つアクション性がより際立っていた。

『AIR/エア』

監督:ベン・アフレック

靴の映画かと思ったら、「顔」の映画だった。会話中の切り返しショットで、切り返されるたびにアップになっていくマット・デイモンの顔!
反対にこの作品を象徴するはずの「ある人物」の顔だけは徹底して正面から映そうとしない。あるシーンでは「さすがに不自然では…」と思うくらい、徹底してこの人物の顔は画面外に排除される。その代わりに何度も映画の中でこの人物は名前を連呼される。「マイケル・ジョーダン」「MJ」「ジョーダン」と。
そしてそれはエア・ジョーダンが成し遂げたことを象徴しているようにも思える。ナイキはこのスニーカーによって、良くも悪くも「ジョーダン」を人(肉体)からブランド(名前)に変貌させてしまったから。

『ザ・ホエール』

監督:ダーレン・アロノフスキー

主人公は、ソファにほぼほぼ拘束された状態で、動くこともままならない巨漢のチャーリー。映画の舞台はずっとチャーリーの住む一室。モーションピクチャー(動く絵)である映画における条件として、かなり厳しいな…と思った。
しかし本作は、この「ほぼ動けない」巨漢の物語にしっかりアクションを導入し、110分の映画を完成させている。むしろ「動くこともままならない人物」だからこそ、一つひとつのアクションに緊迫感が生まれていた。
1つ気になったのがラストの白画面。『ブラック・スワン』(2010年)も同様にクライマックスで白画面を使用していた記憶があるので(記憶違いかも)、アロノフスキーは白画面が好きなのかもしれない。

『午前4時にパリの夜は明ける』

監督:ミカエル・アース

ラジオ、レコードプレイヤー、そして固定電話。本作に描かれた80年代の人物たちは「何かを聞くこと」に場所と時間を拘束されている。
その拘束はたしかに不自由だ。しかし一緒に拘束され、そのひとときを過ごした人との時間は尊さを増す。たとえそれが人生の長さからすれば一瞬の出来事だとしても。いやその時間が有限だからこそ、その瞬間を永遠のように感じるのだろう。そんな尊いひとときを、この作品は刻みつけている。
ちなみにもう一つ、この作品には時間・場所を拘束されながら人物が尊いひとときを味わっている瞬間が登場した。それはもちろん映画館のシーン。この映画で尊いひとときとして夜が多く選ばれているのは、もしかしたら映画館の闇が表されているからかもしれない。

プレイリスト

4月はとにもかくにもDaniel Caesarをよく聴いた月だった。アルバム『NEVER ENOUGH』を繰り返し聴いたし、過去の作品も聴き直した。特に"Always"が素晴らしい。今年聴いた新曲の中で、最も心に響くメロディーだった。

仕事

「NiEW」 金子由里奈監督インタビュー記事

取材・文:井戸沼紀美さん / 撮影:タケシタトモヒロさん / 編集:久野剛士

映画『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』については、元・現役あわせてcinra関連の人たちが取り上げた率がとても高い。
上記記事で執筆いただいた井戸沼さんが関わったme & youの金子監督×高島鈴さん対談に、羽佐田さんが執筆されたcinraの金子監督×山田由梨さん対談
、Podcastでも取り上げられていた。


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