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備忘録 | 22年10月

今月から、(できれば毎月)備忘メモを残していきたいと思う。基本は月々の振り返りになるけれど、詳しく記すというより、あくまでメモのようなものとして。


劇場鑑賞 映画

『トゥー・スリープ・ウィズ・アンガー』

監督:チャールズ・バーネット / 1990
A.S.C.C(After School Cinema Club)さんが開いている「This is Charles Burnett チャールズ・バーネット セレクション」にて鑑賞。
久しぶりに家を訪ねてきた旧友ダニー・グローバー。1泊するだけかと思いきや、なかなか帰らず、その存在は主人公家族のメンタルにストレスを与えはじめる。
なかなか自分たちが部屋から出られないことでストレスが増し、人々が狂っていくブニュエル『皆殺しの天使』の裏返しの設定で進む、不気味なコメディーとして楽しんだ。こういう作品は大好物。
なにかしら物が床に落ちるたびに、「次は何が起きるのだろう」とドキドキさせられた。
次回もバーネット上映があれば、また駆けつけたい。

『マイ・ブロークン・マリコ』

監督:タナダユキ
80分程度の短い尺の中で、食事シーンの多さが目立つ。ただしそれらの食事シーンは「事件を知る」「マリコの供養」「過去との向き合い」と、それぞれ異なる意味合いを持っていて、どれ1つとしてシイノにとって純粋な食事になってはいない。
そう考えれば、終盤にシイノが受け取る弁当をものすごいスピードで開封するシーンは単なるギャグとしてだけでなく、やっとありつけた純粋な食事だったからだろうと感じられた。

『ミューズは溺れない』

監督:淺雄望
立教大学院時代の同級生・淺雄監督の作品で、TAMA映画祭以来、2回目の鑑賞。本作のキモの1つでもある「音」の鳴りがグレードアップしていた。
1回目は、「この作品はどこに連れて行かれるのか」というジェットコースターのような楽しさがあった。2回目は、この作品がとてもタイトな作りの映画であることに気がつく。豊かなディテールに溢れてはいるが、無駄は絞られた、引き締まったボディの映画という印象だ。
自主映画でこんな立派なパンフレットが作られるなんて。「淺雄さんやるな!」と同級生の活躍がうれしくなった。

『彼女のいない部屋』

監督:マチュー・アマルリック
後半で明らかになる「事実」を把握できた今の状態で、もう1度見直したい。妄想と現実、音と映像が入り乱れるモンタージュのため、1度見ただけでは到底捕えられない複雑さがあった。
前シーンの音が次の映像にも引き継がれたままになるなど、音は映像に従属しない。むしろ、音の記憶が映像にはみ出し、映像の現在をかき乱していく。それは、記憶によって現実が侵食され、妄想を発展させていく彼女の見ている景色のようだった。
ゴダールの死後に本作を見たからか、音と映像と苦闘を続けた彼を少し思い起こした。

『PIG ピッグ』

監督:マイケル・サルノスキ
ポスターのビジュアルやキャッチコピーから、『ジョン・ウィック』みたいな作品をイメージし、ワクワクして観に行ったのだが……。どんどん展開が『美味しんぼ』みたいになっていって、全然イメージと違う作品だった。
退屈な映画じゃなかったからよかったし、このビジュアルでなければたしかに観なかったかもしれないが、それでも宣伝詐欺スレスレだと思う。
劇場から出たところで、男性2人組が「全然イメージと違った。こんな繊細な映画、久しぶりに見た!」と語り合っていた。どちらもジャッキー・チェンのTシャツを着ていた(きっと自分と同じくアクション映画を期待していたのだろう)。

ウォン・カーウァイ特集

鵠沼海岸シネコヤで上映されていたので、『恋する惑星』『花様年華』『天使の翼』、そして配信で『欲望の翼』を鑑賞。学生時代にはぼんやり観ていただけだったが、今回はなぜ熱狂的なファンがいるのかも理解できた。
「運動」を1つの基準にすると、その魅力を捉えることは難しい。持続的な運動よりもむしろ、刹那的な「艶」に賭けたカットの集積みたいな映画。ジャンプカットの多用はよく指摘されているが、多用どころか、ほとんど全編ジャンプカットといってもよい。その刹那性が青春ものと相性が良いのだと思う。
ただ自分には少しロマンチックすぎる。どれだけ好意を持っている相手でも、『恋する惑星』のフェイ・ウォンのように家に上がって勝手に掃除とかされるのは嫌だ。

プレイリスト

特によく聴いたのは、Show Dem CampKenny MasonFlwr Chyldのアルバム。Kenny Masonは幅の広いスタイルが素晴らしいので、1曲だけでなくアルバムを通して聴いてこそ、その凄さが理解できる。
月の後半にかなり好きだったのはJeezy×DJ Drama。トラックが全曲いい。エネルギッシュで「ヒップホップを聴いている」感が強くて好きだ。
J.J Cale ”Cherry”は1970年代の曲だが、これは『彼女のいない部屋』の劇中で流れていて印象的だったのでよく聴いた。

公開された仕事

インタビュー・執筆
『コロンバス』『アフター・ヤン』のコゴナダ監督にインタビューした記事が公開された。コゴナダはその作風同様に誠実な人で、1つの質問に10の言葉を語ってくれるタイプ。人柄を含めて好きになった。
これまでは編集という役割が多かったが、今後はインタビュー・原稿にも力を入れたいと考えはじめていて、その1本目としては悪い出来ではなかったと思う。

そのほか

両親が鎌倉観光に来て、一緒に空花という懐石料理の店でランチをした。籠に詰まった前菜がとても美味しかった。



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