備忘録 | 23年6月
(できれば毎月)残していきたい備忘メモ。基本は月々の振り返りになるけれど、詳しく記すというより、あくまでメモのようなものとして。
劇場鑑賞 映画
『THE WITCH/魔女 ―増殖―』
監督:パク・フンジョン
前作の主人公(キム・ダミ)の妹(シン・シア)を主人公に据えた、THE WITCHサーガの2作目。1作目がかなり面白かったので期待が大きかった。ただし前半は展開がスローで退屈。さらに構成も複雑で筋を追うだけで疲れる。シン・シアを匿う牧場主の姉弟の話と、少女を狙う組織(派閥が2つ)の動き、さらにシン・シア同様に遺伝子操作された殺人兵器の少年少女たちの動きがそれぞれ描かれる。
牧場での決戦が描かれる後半は本シリーズらしく過剰でおもしろい。シン・シアが少し殴ったり投げたりするだけで、相手は数メートルも吹っ飛んでいく。ドラゴンボールなどジャンプ漫画を実写化したときに参考にすべきはこうした描写なのかもしれない。
また「殺人兵器なのに食いしん坊」キャラを割り当てられたシン・シアのスーパーマーケット場面も忘れがたい。試食にがっつくチャーミングな姿が微笑ましかった。
『クリード 過去の逆襲』
監督:マイケル・B・ジョーダン
『クリード』シリーズは大好きだが、最新作はいまいち乗り切れなかった。気になるポイントはいくつかある。中でも最も気になったのはダミアン(ジョナサン・メザーズ)の扱い。アポロの息子は更生できるが、ダミアンのように育ちの良くない人間は出所後も反省などしないという主張とも受け取れる内容になっていた気がする。『すばらしき世界』(西川美和)と主題はもちろん異なるので仕方ないのだが……。
そしてラストのサプライズ。(おそらく)マイケル・B・ジョーダンの趣味で追加されただけのアニメ『クリード SHINJIDAI』! なんだったんだ……。
『それでも私は生きていく』
監督:ミア・ハンセン=ラヴ
道を渡ってアパートメントへ。階段を上るサンドラ(レア・セドゥ)。父親が住む家の扉を明けるところから物語は始まる。
そんな冒頭からして、扉が印象的な作品だった。父親が入る施設の先々で、開いたままの扉から他の老人たちが父親の病室に迷い込んでくる。扉に押し付けられてキスをする瞬間、既婚者のクレマン(メルヴィル・プポー)との関係が決定的に変化してしまうなど。
またレア・セドゥが父親の本棚を眺めながら放つ「施設の中の人物よりも、本棚に並ぶ本の方が父親を表している」という趣旨のセリフが心に残った。
『一晩中』
監督:シャンタル・アケルマン / 1982年
私はシャンタル・アケルマンを「奥行きと格闘する作家」として見ている。本作も奥行きの使い方が印象的だった。一晩の中で、多くのカップルの様子を描くだけの映画なのだが、その多くが画面奥に姿を消していく。文字通り「夜の闇に吸い込まれる」ような描写だ。夜が明け、朝になると画面奥から画面手前に向かって歩いてくる人物の姿が映し出される。夜=画面の奥へ / 朝=画面の手前へと運動の方程式が変化しているのが読み取れる。
『ゴールデン・エイティーズ』
監督:シャンタル・アケルマン / 1986年
本作でも奥行きがかなり意識された作品になっている。向かい合うブティックと美容室という舞台設定が、それを支えている。どちらもガラス張りのお店なので「覗くー覗かれる」関係が店単位で可能になる。
2つのお店に共通して設置されているのがカーテン。美容室でもブティックでも、カーテンは人に見られてはマズい関係性の男女が身を隠すスペースを作る。奥行きを覗く視線を遮断するためにカーテンが使用されていた。
作品とは関係ないが、『ゴールデン・エイティーズ』を見に行ったときに井戸沼さんと遭遇。数秒、立ち話をした。映画を見に行って偶然、友人と会うのはうれしいことだ。
『マーベラス・ミセス・メイゼル』S5
プレイリスト
自分がこの数年、推しているKenny Mason。「2023 XXL Freshman Class」に選出されなかったのは残念だったが、今回のアルバムも悪くない。
¥ellow BucksとC.O.S.A.の曲は、C.O.S.A.がジャージーにとにかくハマっていることが理解できる1曲。余白の多いトラップはメロディーとの相性がよかった。ドリルやジャージーのように刻むタイプのビートが増え、パーカッシブなラップがまた勢いを強めてきた印象を受ける。
仕事
今泉力哉×二ノ宮隆太郎 対談 - NiEW
取材執筆:森直人さん 撮影:大畑陽子さん