『その冬を境に鳩の群れを見ていない。』
その昔。
70年代から80年代初頭にかけて、『レース鳩ブーム』というのがあった。
勿論、今も根強い人気を誇っている競技なのだが、当時の人気ぶりたるや物凄いものだった。
実際、近所でレース鳩を飼っている家が数軒あったりして、ガキの時分には悪友とハト小屋に入り込んだりして、しこたま叱られたものだ。
何故我々ガキんちょ達が鳩に興味を持ったかというと、『週刊少年チャンピオン』で連載していた『レース鳩0777(アラシ)』の影響だ。
今では考えられない事だが、レース鳩の漫画が『007ライダー』『マカロニほうれん荘』『ブラックジャック』『ガキ刑事』『らんぽう』などなど、綺羅星の如き人気作品と肩を並べていたのだ。
その巻数14巻。
連載終了した1981年には、私は既にチャンピオンを読んではいなかったものの、その圧倒的な存在感は、決して忘れる事など出来ない。
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オリジナルサウンドトラック
『鳩の撃退法』堀込高樹(KIRINJI)2021年
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昨年、バンド形態で活動していたKIRINJIを解体し、新たに堀込高樹個人の『プロジェクトKIRINJI』として、新たなフューズへと突入してのサウンドトラック2作目。
前作の『オリジナルサウンドトラック・共演NG』が、殆ど堀込氏の打ち込みだったのに対し、今回は手練れのミュージシャンを起用。
クレジットに楠さんや千ヶ崎さんの元KIRINJIメンバーの名前を見つけ、思わずほくそ笑む。
曲はあくまでも劇伴なので殆どが短く、長くても3分台。
主題歌『爆ぜる心臓』のインスト・バージョン違いも面白い。まさにアレンジの妙。
後半に当時するワム!のあの曲に似たインスト曲も実に洒落が効いているし、何よりあの!有名曲のカバーも実に嬉しいではないか!!♫
所属するレーベル『VERVE』所属アーティストならではの見事な逸品。
原作は残念ながら未読だが、映画版のキャストがまた素晴らしい。
堀込高樹氏の劇伴を大音量で堪能出来る劇場に、ファンならずとも足を運びたいものだ。
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早朝の出勤。
6時半を過ぎた頃に国道を通過していると、頭上を鳩の群れが旋回していく。
リーダーを先頭に朝のトレーニングだろう。
それは毎日続いていた。
春、夏、秋、そして冬・・・。
凍てつく冷気を切り裂きながら車を走らせる。
ふと、鳩小屋を設置した民家の方を見ると、このジャケットと同じ光景が広がる。
その日、鳩達は飛んでいなかった。その日も、また次の日も、そしてまた次の日も・・・
飼い主に何かあったのだろうか?
その冬を境に鳩の群れを見ていない。