『2020大阪訪問記④』
夕暮れの大阪の海は、朱く染まりながらただ静かに波を寄せていた。
はしゃぐ子供、肩を寄せ合う恋人達、観光客・・・皆、日曜の夕暮れを楽しんでいる。
まさかこの後、世界が分断されるとも知らずに・・・
・・・で。
入場までの時間を、散歩しながら潰していた私達に、いよいよ国民的アイドルが開催する『博覧会』への入場時間が近づいてきた。
流行る気持ちを抑えられない家族が私を急かし、会場裏側に面した海より、表側の入場口へと足速に向かわされる。
と、遠目から博覧会の大きな垂れ幕を仕舞っている係員の姿が見えた。
『あれ欲しい』
先を行く家族が、涎を垂らさんばかりに凝視している。
おい。もし入手したとしても、何処に飾るんだよ?
当選者の集合時間になり、受付を済ませる。
デジタルチケットなので楽だ。
しかも皆一斉に・・・という形式ではなく、入場時間帯も抽選制なので『ゆったりと楽しむ事が出来る』。
これもアイドルからファンへの思い遣りだろう。
その為に会場内で大人数と『密』になる瞬間など殆ど無かった。
流石というべきだろう。
私達は『博覧会』をゆっくりと楽しんだ。
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会場を後にして駅へと向かう。
会場限定販売のグッズを沢山買い込んだ家族は、実に満足そうな笑みを浮かべている。
謎の流行り病が心配だったが、やっぱり来て良かった。
ホテルで一泊した後、ゆっくりと帰りの新幹線を堪能する。
新大阪駅で購入した駅弁に舌鼓を打ちながら、日本最大の霊峰・富士山を楽しむ。
あれから一年が経った。
状況は改善されつつあるが、未だあの頃の日常は戻らないままだ。
また遠出が出来ますように・・・
もう面倒に思わないから・・・
きっとね。
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