『ジミー・ペイジは公式Tシャツの夢を見るか?』
2023年某月某日、英国。
その日は『とある大御所バンド』への大規模なトリビュート・イベントが企画されており、会場周辺は活況に溢れていた。
出演アーティストはロック界のレジェンド達が集結した、実に豪華なラインナップ。
しかもドラムはその大御所バンドの身内が叩くという。
その賑わいといったら、まるでお祭り騒ぎ。
いかにそのバンドが、人々に愛されてきたかが分かるというものだ。
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そんな会場である『O2アリーナ』へと向かう長蛇の列の先頭周辺で、何やら一人の白髪の老人が、その右手にスマホを掲げ、開場を待つ人々の胸元を写しながら、ゆっくりと逆行していた。
『ガラ、ガラ、ガラ。』
左手には、何が入っているのか・・・実に大きなトランクが引かれている。
人の良さそうな笑顔を、薄っすらと浮かべてはいるが、その顔に刻み込まれた皺の深さから察するに、かなり神経質な性分らしい。
『ブート、オフィシャル、オフィシャル、ブート・・・』
白髪の老人は何やらブツブツ言いながら、大きなトランクを引いて、列の進行方向とは逆に歩いて行く。
先頭から30メートルは歩いただろうか・・・やおら老人は振り向くと、トランクの中から小型の拡声器を取り出し、人々に向かって何か言い始めた・・・
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『ガラ、ガラ、ガラ。』
偉大なる英国のロックバンド、レッドツェッペリンのギタリストである『ジミー・ペイジ』御大には、来日すると必ず向かう場所があった。
都内某所のブートレッグ盤(海賊盤)取扱い店だ。
ジミー御大は、大きな空のトランクを伴って現れ、ツェッペリンの新入荷ブート盤を、お店のオーナーから根刮ぎ貰っていくという。
ジミー御大を前にして、『あげない!』なんて絶対に言えないし、言ったらガチで訴えられそう・・・
それを知ってか、ジミー・ペイジは来日する度に必ずやって来る。
大きな空のトランクを引きながら・・・
まるで都市伝説の様な話だが、実話というのが素晴らしい。
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『え〜〜〜と。レッドツェッペリンの非公式グッズをお持ちの皆さん、私はジミー・ペイジでーす。
今から公式以外のグッズ等は、私が全部回収致しますので、直ぐに出して下さい。
Tシャツも選別アプリで分かってますので、脱いで下さいね〜。
あ。因みに。
レッドツェッペリン公式グッズは『O2アリーナ』開設の売店で買えますので、そちらをご利用下さーい。
え〜〜〜と。もう一度お知らせします。
私はジミー・ペイジでーす・・・』
白髪の老人は会場待ちの人々に向かってそう言うと、大きなトランクの中に回収したグッズやTシャツをドンドン投げ入れていく。
そう。彼はジミー・ペイジ。
いつの時代もブレないのだ。
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写真のTシャツは、70年代に日本公演を行った際に作られたものの復刻版だ。
オフィシャルらしいので、街中でジミー・ペイジとすれ違っても全然平気。
『エレキギターはグレコ』
最高にクール。グレコ愛用者には堪らない。
当然、グレコ・オーナーは着用必至だ。
しかし私の妄想の中で登場した
『公式・非公式・判別アプリ』
我ながらナイスアイディア。
開発したら本当に買ってくれそうな気がするよね?
レッドツェッペリン最高!♫