「呼んだもの。」
〈怪異譚は怪異を呼ぶのだ。〉
例えばこんな話・・・
「この前、友人達と真っ暗な部屋の中、蝋燭を立てて怪談百物語をしていたら、ずっと障子の向こうに誰か立っていた」とか、
「5人で20本づつ話を用意したのに、1人だけ1話残ってしまって、〈じゃ、誰が1話多く話したんだよ?!!〉って、大騒ぎになったり、とか・・・
皆さんも、こんな話を聞いたり、読んだり見たりした事があると思います。
【怪異譚は怪異を呼ぶ。】
そう。
それは油断した時を見計らう様に、突然!
・・・地味にやって来るのだ・・・。
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2020年 6月20日 (土曜日)
時刻は夜の8時20分を過ぎた頃だったと記憶しております。
その日、私は子供部屋に設置してあるパソコンで、インターネットにUPされている、講談を楽しんでおりました。
出し物は【怪談】。
講談師にとっての夏の定番メニュー。
もちろん、それはそれは、我々ファンにとっても大人気のコンテンツで御座います。
私が見たのは、ある男の元に夜な夜な二人の女の幽霊が現れて・・・というお話なのですが・・・
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「もし、もし、開けて下さりませぬか?」
「もし、もし、開けて下さりませぬか?」
シーンは二人の幽霊が訪ねてくる場面。
女流講談師の迫真の講釈に、モニターの前で息を飲む私。
パソコンが設置してある子供部屋の灯りは「こうこうと」眩しい位に明るい筈なのに、私は物語に引きずりこまれ、まるで闇の中に居る様です。
「トン、 トン、」
物語に集中していた私は、突然、外部から聞こえた音により、我に帰りました。
「今の音、何?」
それは部屋の外・・出窓の辺りから聞こえてきた様です。
椅子を蹴倒す勢いで、出窓から外を見ました。
しかし、誰も、何も、居ない。
「また前みたく原因不明のアレな訳?!」
以前、実体験怪談噺の、ライブ動画編集時に起きた、パソコンの不具合、及び屋根から聞こえた「誰かが駆け抜ける様な音」を思い出し、鳥肌が立ちました。
ですが、何でも怪異と結び付けるのは良くありません。
落ち着き、椅子に座り直し「なんでもない。」と自分に言い聞かせて、怪談の続きを聞き始めました・・・
「トン、 トン、」
またあの音!!
今度は外へ出て、部屋の出窓の辺りを、くまなく見て周りました。
やはり何も、誰も、居ません。
「どうしたの?」
家族が訝しげに聞いて参ります。
「誰かが出窓を叩いたんだ。」
「えっ?茶の間では何も聞こえなかったよ。」
私は部屋に戻ると、パソコンの電源を落としました。
そう。
何時もの事さ。
怪談を観ていたからだろう?
分かったよ。
ほら。音がしなくなった。