『山道』
かれこれ17年前の話。
当時住んでいたアパートへの帰り道での出来事だ。
その日、遊びに行った友人宅で長居してしまった僕は、車にて帰路を急いでいた。
時刻は午前2時。
友人宅からアパートまでは1時間以上はかかる。
明日は仕事だ。
早く帰ればよかったと後悔したが、後の祭り。
こういう時こそ慌てず、安全運転だ。
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当時、僕が住んでいたアパートは、山間の開けた街中にあり、帰るにはちょっとした山道を抜けなければなからなかった。
いつもなら頻繁に対向車が来る道なのだが、深夜ともなると車も疎らで、また月も出ていない事もあってか、寂しさも倍増だ。
早く帰りたいのか、自然と車のスピードは上がり、寂しさを紛らす為にカーステレオの音量は大きくなった。
漸く山道の中間地点に差し掛かかった時だ。
なだらかな右カーブに差し掛かり、車のヘッドライトが奥深い山林を照らし出したその時。
『人影らしきモノ』
が、木々に身を隠すのが見えた。
「こんな時間に人?しかも真っ暗な山林で?!」
と、僕が疑問に思った、ほんの一瞬!!
その影が『フワリ』と宙に舞った様な感じがしたのだ。
「えっ?!今の何?!」
驚いた僕は一瞬、車を停めて『正体を突き詰めたい衝動』に駆られたのだが、直ぐに考えを改めた。
ここは街灯も民家も近くには無い、山間部。
『人では無かろう』
僕は車の前後に恐怖を感じながら、強くアクセルを踏み込んだ。
『何が起こってもおかしくは無い。』
何故ならこの土地には大きな神社仏閣があるのだから・・・