『遠い昔のZinniaへ・・・』
あれから3か月と1週間が経った。
Zinniaが僕の前から姿を消して100日。
本来なら今日、この瞬間に、帰って来ても良い筈なのだが・・・
未だにZinniaは僕の前に現れない。
『これはね。ヒャクニチソウって言って、とても長持ちする花なのよ。
しかも暑さに結構強かったりして。
え?まるで私みたいって?アハハ。
そうかも!
だからね、この花を私と思って大切にしていて。
きっとこの花が枯れる前には必ず帰ってくるから。
だから。ね?』
そう言うとZinniaは、この赤く美しい花を僕に託した。
まるで自分の命を僕に預ける様に・・・
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オゾンホールより容赦無く降り注ぐ紫外線の影響で、地球上の生態系は大きなダメージを受け、人類は確実に破滅への道を歩んでいた。
そんな折、電磁層を研究していたチームが、予期せぬ事故に遭遇。
脱出する際、偶然にもタイムリープ技術を発見する事と成った。
以降、トライ&エラーを数年繰り返した後、遂に有人タイムマシンの開発に成功。
精鋭揃いのパイロット及び技術者を集め、
産業革命期まで過去を遡り、二酸化炭素を排出しない新技術を定着させ、排ガスなどの空気汚染を『無かった事にする』という、プロジェクト・blue skyを発足したのであった。
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『オイ、聞いたかよ!産業革命期のヨーロッパまで行った部隊が、マシントラブルで帰って来れなくなったって!!
当時の技術を応用しながらの修理って・・・
一体、何百年かかるんだよ?!』
愛するZinniaが配属された部隊のマシンに、深刻なトラブルが発生した為、Zinniaは産業革命期のヨーロッパ人として、過ごさなくてはならなくなってしまった。
僕の手元でZinniaの生命というべきヒャクニチソウが、それはそれは見事な花を咲かせてくれていた。
『ヒャクニチソウはZinniaの命。命を絶やす事が無い様に、大切に育て続けなければならない。』
僕は禁止されているクローン技術を使って、Zinniaに貰ったヒャクニチソウを複製し、大地に植えては種を採取して、ひたすら絶やす事無く、美しい花を咲かせ続けた。
タイムマシンが過去へと旅立った施設脇の土地を購入した私は、土地一面にヒャクニチソウを咲かせ続ける。
いつZinniaが帰って来ても良い様に・・・
流れる汗を拭いながら、私は霞む瞳で空を見上げた。
灼熱の太陽。
緩い風。
いつか広がる青い空を夢見ながら。
いつZinniaが帰って来ても良い様に・・・
いつZinniaが帰って来ても良い様に・・・
いつZinniaが帰って来ても良い様に・・・
もし私が息絶えてしまったとしても、君に気付いてもらえるように・・・
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