二つの『ON THE BEACH』事件。
80年代中盤。
プロモーション・ビデオがラジオに取って代わろうとしていた時代。
真夜中のTBSテレビで画期的な音楽番組が始まった。
『ポッパーズMTV』だ。
メインVJであるピーター・バラカンさんの、葉に衣を着せぬストレートな語り口と、他の番組では絶対に見れない選曲の妙が実に堪らなく、多角的な聴き方・見方に対し、大変勉強させて頂いたものだ。
そんな『ポッパーズMTV』で観たイギリスのミュージシャン、クリス・レアの曲が本当に良くて、クリスの弾く印象的なフレーズが強く心に残ったのだった・・・
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クリス・レア『ON THE BEACH』1986年
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刻は過ぎ、ポッパーズMTVから10年後・・・
何故か警備員となって色々な現場を体験していたある夏の日。
某有名金融会社関係のミッションを終え、埼玉県から警備会社の拠点である、渋谷駅前のビルまで会社の車トヨタ・Rockyを走らせていると、カーラジオから懐かしい曲が流れて来た。
クリス・レア『ON THE BEACH』。
開け放った窓から排ガスと共に涼しい風が車内に潜り込んで来る。
メロウかつキャッチーなギターフレーズが、心の琴線を激しくノック。
嗚呼。仕事の疲れもあってか滅茶滅茶センチメンタル。
よし!この任務が完了したらクリス・レアのアルバムを買うのだ!
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『ハァ??!あのメインディッシュたるべきギターフレーズが入ってないんですけどー?!』
(👆此方が件のアルバム・バージョン)
『ON THE BEACH』が収録されているアルバムを聴きながら思わず僕は叫び声を上げた。
『あのフレーズ』は、かろうじてエレピが少し鳴らしているだけ、しかもテンポが遅くなってる?!なんか不完全燃焼気味。
あれは夢が現か幻か・・・
果たして僕の妄想が生み出した、脳内バージョンだったのだろうか?
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あれから26年後、つい2週間程前の事。
ラジオ日本『クリス松村のいい音楽あります』を聴いていて、僕は思わず仰け反った。
クリス・レア『ON THE BEACH』の12インチバージョンがかかったのだが・・・何と!!
(👆これぞまさしく探していたバージョン!)
メロウかつキャッチーなギターフレーズがフューチャーされまくった、まさに僕が聴きたかったバージョンだったのだ!!
これだよ!これ!!
名バンド『ハミングバード』を経て、後に『ジェフ・ベック』の元で大活躍するキーボーディスト、マックス・ハミルトンのエレピとクリスのギターとのユニゾンが最高なんだよ!!♫
漸く長年行方不明になっていた恋人に逢えた様な・・・そんな幸福感に包まれながら、暫し僕は『ON THE BEACH』で独り妄想に耽けるのであった。
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追伸。
久々にアルバム・バージョンを聴いてみると、装飾が取り除かれた此方もなかなか良いね。うんうん。
などと独りごちていたら、自室の棚の奥からクリス・レアのベスト盤が出て来た。
『あれ?こんなCDあったっけ?』
僕は一瞬硬直した。
『ON THE BEACH』アルバムと一緒に購入した記憶が甦えって来る。
『もしかしてここに入っている『ON THE BEACH』は、シ、シ、シ、シングル・バージョン?』
謎は意外と近くにあるのかも知れませんネ。
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