『パチもんアニソンの逆襲』
昨年、押入れの天袋を整理していた時の事。
ダンボール箱に無造作に詰め込まれた、ダビング・カセットテープの山の中に、見慣れない市販テープを発見。
『なんじゃこりゃ?』
よく見てみれば80年代の有名アニメソングをカバー(?)した、所謂『パチもんカセット』だった。
今はもう殆ど見かける事の無い、このジャンル。
当時はホームセンターやスーパー、ドライブインなどで、それこそ山の様に売っていたものだ。
値段を見てみる。
『500円』
消費税導入前でバーコードも無い。
当時の市販アニメカセットテープが、だいたい2500円だったので、安いと云えば安い。
しかし失礼を承知で書くのだが、TV放送で聴き慣れた『本物』と比べれば、明らかに聴き劣りするのは確かだ。
上手いけど『違う歌声』。
上手いけど『ちょっとチープな演奏』。
なので自分で買ったりする事は絶対に無いのだが、何故かここに有る。
記憶回路を繋いでいく。
そうだ!!そうだった!!
『友人にプレゼントするのに買ったんだ!!』
誕生日に洒落を込めて渡したところ、
『パチもんなんて絶対に聞くものか!!』
と、大層御立腹。
仕方なしに持ち帰ったんだっけ。
僕はその時の様子を思い出しながら苦笑いをすると、彼のセンスの無さにほくそ笑んだ。
そう。
今や『パチもんアニソンカセット』は立派な絶滅危惧種。
マスターテープなど存在しない、貴重な音源なのだ。
『あの頃、もっと沢山買っておけばよかったな。』
僕は自分の先見力の無さにガッカリしながら、
『この世の中、一体どうなるか分からないものだ。』
と一人呟くのだった。