「ヤァ!怪異は地味にやって来る。」
「至って地味。」
私の場合の怪異経験で見れば、どの体験も「かなり地味。」
巷に溢れる怪異とは違い「オチ」など決してそこには無く、ましてや怪異の原因など実際「本当に分からない。」
(最も「オチ」を求める心理は、自分にとっての「安心」を求める事と同じで、「オチ」に着地する事で、「不安を払拭出来る」傾向が見られる。
よって「オチが無い」=「不安」に駆られる事からみると、「人は理解出来難い物事に恐怖心を抱く」生き物だと云う事が、浮き彫りになってくるのだ。)
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ほうら、この世界に数多ある怪異奇譚より、装飾や脚色などの〝エンターテイメント的要素”を抜き出せば・・・ほらね、「地味な怪異」が顔を出す。
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1997年頃の私は、栃木県内で手広く展開していた、とある中古自動車販売店の営業職に就いていた。
中古車の販売と共に、委託販売や買取り業務も行っており、査定士の免状も持っていた。
会社には軽自動車の代車が数台有り、売り手の希望額と買取り額との折り合いがつけば、次の購入希望の車が見つかるまで代車を貸し出ししていた。
その軽自動車に営業マンが乗る事はあまり無かったが、他の店舗の車輌の試乗が入った際は、他店舗まで自走し、商談車と交換してくるのだ。
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その日は宇都宮の本社まで代車に乗って行った。
お供は色々な曲を詰め込んだ渾身のカセット・テープ。
ニッチな内容が「俺ジナル感」を主張し過ぎている。
高速を(軽なりに)かっ飛ばし、ストレス解消!!心からドライブを堪能した。
しかし、私はうっかりとカセット・テープを代車に載せたまま帰ってきてしまい、残念ながらそのカセット・テープは、何処かへ行ってしまったのだった・・・。
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それから2年後のある日の夜。
私は他県からやって来たお客様の車を、一人で丁寧に査定していた。
ボディ周りをチェックし、室内へと移動。
オーディオをチェックする為にカセットデッキの電源を入れた。
「フ・フ・フ・ッ」
車のスピーカーから変な笑い声が聞こえた気がした。
誰か居るのか?と、車外を見廻す。
誰も居ない。
そういう音楽がカセット・テープに入っているのだろうと、カーオーディオのボリュームを上げる。
「シーーーーーーーーーー」というノイズの中で「・・・シブリデス・・」という声が聞こえた気がした瞬間!
「フ・フ・フ・ッ」
やっぱり聞こえる!!
更にボリュームを上げると・・・
突然大音量で音楽が流れ出した!!!
「ビックリしたぁ!!💦」
慌ててボリュームを下げた。
流れてきたのは、少し前まで私もよく聴いていたロック・ナンバー。
「おっ?!久しぶりだ!♫」
先程の件などすっかり忘れて、音楽を聴きながら査定業務を黙々とこなす。
「あれ?このニッチでストレンジな曲目の流れは何処かで聴いた様な・・・?」
イジェクトボタンを押す。
出て来たカセット・テープは、数年前に行方不明になっていた、あのカセット・テープだった。
以前、この話は、とあるラジオ番組で取り上げていただいた事があります。
本当に嬉しかったな〜。
最後までお付き合い下さって、感謝です♫