『ビデオテープの逆襲〜見れない時代〜』
ここは北関東の端の端。のんびりした田舎町の畦道を、何やら小学生が息を切らしながら走って来ますぞ。
何か事件でもあったのでしょうか・・・?
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『ジィちゃん!ジィちゃん!!あのね!あのねっ!!ビデオテープって知ってるかっ?』
『何じゃ?何じゃ?タケシ。いきなりビデオテープじゃなんて?!そりゃあ勿論知っとるが、そのビデオテープがどうかしたのか?』
『実は学校で先生から「調べてこい」って言われたんだよ!宿題なんだよ!』
『またまた変な宿題じゃの〜。』
『いいから!いいから!早く教えてよ!!』
『仕方がないのう。ええっとビデオテープじゃな?
昔むかし、1970年代も後半の事じゃった。それまで高価で、一般市民には到底高嶺の花だった『ビデオデッキ』が、高度経済成長の到達点『バブル期』突入の為に『頑張れば買えるかもしれない』と云う次元にまで来ておったんじゃ。』
『ジィちゃんが幾つの頃?』
『丁度、今のタケシ位の頃じゃよ。ワシが初めてビデオデッキとテープを見たのは、金持ちのカワグチ君の家じゃった。まさかテレビ番組を録画して、好きな時に好きなだけ観れるなんてのぅ。とても最初は信じられなかったわぃ。』
『へぇ〜!!最初は高かったんだ!!』
『だがな。80年代に入り、後半になる頃にはビデオデッキもかなり安くなってのぅ。どこの家庭でも気軽にテレビ番組を録画出来る様になったんじゃ。』
『ビデオテープって云うのも安くなったの?』
『そうじゃよ。それまでは高くて、なかなか気軽に買えなかったビデオテープが、かなり安くなっての。録画用も市販のビデオソフトも誰でも買えたんじゃよ。』
『市販のビデオソフトってどうやって作るの?』
『それはな。ダビングじゃよ。沢山繋いだビデオデッキを全部一緒に稼働させて、一本、一本、ビデオテープに記録していくんじゃよ。』
『何か大変そ〜〜〜っ!!』
『そうじゃ!!この前、倉庫で見つけたワシの古い雑誌に『ビデオソフト制作』の詳しい話が載っておったんで、一緒に観てみようか。』
『うん!うん!見る!見るっ!!』
『先づは編集機じゃ。これでダビング前のアニメや、音楽、映画をビデオソフト用に編集するんじゃ』
『そんで編集作業が終わって、マスターテープが完成したら、沢山のダビング用ビデオデッキでひたすらコピーじゃ。
『こんなに沢山あったら、ダビングも大変じゃったよな。ん?タケシよ。こんなん話で大丈夫か?』
『ジィちゃん!!全然バッチリだよ!!これなら先生に褒めて貰えるよ!!と、ところでさ。ジィちゃん。ウチにはさ。そのさ。ビデオテープの中身がテレビで観れる、そのビデオデッキってさ、まだ有るのかな?』
『ん〜。確か壊れてしまったヤツが一台、倉庫にあった筈じゃがのう・・・。何か観たいビデオテープでも有るのか?』
『い、い、いや!と、と、特に無いよ!!うん!あ、ありがとう!!ビデオテープの事が良く分かったよ!!!ま、またね!ジィちゃん!!!』
『おぉ。また何時でも気軽においで。』
ガチャガチャッ!!
『ン?何じゃ?タケシの奴、慌てて帰って。しかも何か落としていったゾ。ふむふむ。ビデオソフトか。
な!な?!何!? 『黒木香』か?!
全くタケシの奴(笑)今はもっと凄いのがネットに沢山転がっていそうなものを・・・(笑)
だがな。その『見たい!』と思う心こそが、明日への浪漫を生み出す、立派なモチベーションになるのじゃよ!タケシは今まさに青春じゃな!!』
あれれ?そう言いながらもオジィさん。ビデオデッキを倉庫から持ち出してきて、真剣な眼差しで修理し始めましたよ?
何だかんだ言って結局は
観たいだけじゃん!!
でもそういう時代の変革期には、エッチな・・・もとい。『浪漫の要素』が必要不可欠なんですね。
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