『雨降る夜は実にメロウ』
夜。予報通りに雨がシトシトと降る。
まだ雨足は強くなく、屋根を打つ打撃音(ビート)もあまり感じられない。
でも・・・だからこそ。
僕の気分はメロウに染まっていくのだ・・・
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その気分をきちんと自覚したのは中学生の時だ。
金曜日の夕刻。
学校があまり好きではなかった僕にとって、半ドンの土曜日は『ハンパ』な時間でしか無かった。
憂鬱で退屈な時間。
早く家に帰って『お笑いスター誕生』が観たいし、何か面白そうな映画が放送されるかもしれない。
帰りたい。本当に憂鬱だ。
木曜日位までなら諦めもつくのだが、週末直前、金曜日の夕刻は・・・実に切ない・・・
切ないじゃないか・・・
そんな僕に残された術は、好きなアニメに没頭するだけだった。
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『装甲騎兵ボトムズ』
1983年放送のテレビアニメだ。
それまで他の作品には無かった『ハードボイルドな世界観』が実にクール。
しかも劇中に登場するアーマード・トルーパー(人間が乗り込む戦闘マシンだ。)のデザインがミリタリー色の強い素晴らしい事も相まって、中坊のハートを心底鷲掴みするには、充分過ぎる程の魅力に溢れていたのだ。
そんな装甲騎兵ボトムズのエンディング曲が、これまた絶品!!
『いつもあなたが』
作詞・高橋良輔 作曲/編曲・乾裕樹作
歌 TETSU(その正体は今や有名なシンガーソングライター/プロデューサーの、あの人だ!!)
実にメロウなナンバーだ。
この『いつもあなたが』を金曜日の夕刻に聴くと、心の中に『メロウな雨』が降り始める・・・
そう。シトシトと・・・
エンディングでは、降り頻る雨の中、ヒロインがアーマードトルーパーのコクピットに座り、独り物思いながら佇む・・・といったシチュエーションが流れていく。
そして僕の心の中にも雨が降り頻る。
いつしか『絵と音』が僕のハートとシンクロするのだ。
そう。
『ライトメロウ』
僕を想ってくれるヒロインなど居やしないのに、どうしてだろう?
掻きむしりたくなる程に、僕の心が『切なく』なっていくんだ・・・