『ロッカー、アンディ・テイラーの事』PART.①
1985年7月13日。
僕はTVの前で眠い目を叱咤しながら、ブラウン管の向こう側で繰り広げられている、記念すべき世紀のチャリティー・イベント『LIVE AID』の光景を見逃すまいと、必死にTVを凝視していた。
THE POWER STATION
ボーカルはマイケル・デバレス。
元シルバーヘッドのハスキーな歌声が魅力のセクシーな男だ。
ラフなステージングも全然悪くない。
そう。悪くない。悪くないんだ。
しかし、違う。違うんだ。
ロバート・パーマーのダンディでクールな歌声こそがTHE POWER STATIONなんだ。
心なしかアンディもジョンもかなりラフでグラマラスな演奏だ。
そう。まさにグラムロック。確かにグラムロック。
でも僕が見たかったのは、あのファンキーでハードなTHE POWER STATIONなんだ。
落胆してしまったのか、僕はいつしかTVの前で眠ってしまった・・・
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『ワーーーーッ!!』
というTVからの大歓声で目覚めた僕の前に、DURAN DURANが登場していた。
会場のJFKスタジアムからの物凄い熱気が、日本の片田舎の僕の前までやって来た!
サイモンがプロモーションビデオと全く同じアクションで華麗にキメる。
素晴らしい!!
しかし、サイモン以上に派手で外連味溢れるアクションで、僕のハートを鷲掴みにした男がいた。
アンディ・テイラー!!
ファンキーなギターカッティングと歪んだリフのバランス感覚が絶妙な上に、ハーモニーボーカル・パートは殆どアンディ・テイラーが見事過ぎる程にキメていたなんて!!
その瞬間、僕はアンディ・テイラーのファンになったのだった。
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THE POWER STATIONでのハードでファンキーなプレイにより、以前とは比べものにならない程、ギタリストとしての評価を上げていたアンディだったが、僕はその時点まで、少しナメていたと思う。
けれど生中継で観るアンディのカッコいい事、カッコイイ事!!
それ以来、僕の中のDURAN DURAN・No.1は、ジョン・テイラーからアンディへと変わっていった。
LIVE AID出演前に出たシングル
『A VIEW TO A KILL』007美しき獲物たち〜
の素晴らしさも拍車をかけ、次作でのアンディの活躍ぶりを楽しみにしていた矢先・・・
『アンディ・テイラー、DURAN DURANより脱退』
の報が届いた。
以前より言っていた『ハードなロックをプレイしたい』というアンディの発言を考えれば、当然の展開で納得するばかりではあったが、同時に不安を隠せない自分も居たりした。
『一体どういったロックをプレイするのだろうか?』
結局、僕の心配は杞憂だった。
最強のパートナー・スティーヴ・ジョーンズとのタッグ結成により、数多くの名曲、名演を生み出していく事になるのだ。
(続く)