『THE POWER STATION』 〜過小評価へのジレンマより生まれた、夢のスーパープロジェクト〜
1980年代。
イギリスの若者達によって結成されたバンドが、世界的な成功を収める。
『DURAN DURAN』
ニューロマンティック・ムーヴメントの代表格として、数々のヒット曲をチャートに送り込んだばかりでなく、その甘いルックスで世界中の人々を魅了し、80年代を代表するアイドルとなった。
しかしアイドルとして扱われる事により、バンド本来の根幹を成す『技量の高さ』は語られずに、ミュージシャンとしての評価は低くなる一方であった。
かと言って今更バンドの方向性を変える訳にはいかない・・・
『DURAN DURAN』のベーシストであるジョン・テイラーは、バンド結成に至る初期衝動の源【『セックスピストルズ』と『CHIC』の融合】というアイデアに、再度着手する事を画策する。
『THE POWER STATION』
ソウル、ロック、ファンク・・・
扱うテーマは『DURAN DURAN』と重なる部分も多いのだが、その人選を見れば、いかに新しいものを生み出そうとしていたのか、直ぐに分かる筈だ。
ロバート・パーマー(ボーカル)
アンディ・テイラー(ギター)
ジョン・テイラー(ベース)
トニー・トンプソン(ドラムス)
まさに夢の様なスーパープロジェクトが誕生した。
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元々ソロシンガーとして高い評価を得ていた『知る人ぞ知る』実力派ボーカリスト、
ロバート・パーマーの歌声は、このアルバムの主役が彼である事を、その圧倒的な存在感で知らしめる。
『クールなダンディズム』
とは彼の事を言うのだ。
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『DURAN DURAN』でのパンキッシュルックなギタースタイルは、あくまでもイメージ。
実際、バンドでのギタープレイは『ナイル・ロジャース』スタイルが一番近く、楽曲を良く聞くと分かる様に、アンディのカッティングが肝となっているパターンが多い。
しかし、それによりロッカーとしてのアンディ・テイラーが相殺されるのは忍びない。
だが、このプロジェクトで彼は見事、ギタリストとしての自由を得て、その結果『DURAN DURAN』を脱退する事になる。
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『CHIC』の屋台骨としての圧倒的な力量は実に計り知れなく、そのパワーはダンスフロアを一晩中、狂熱の嵐で沸かせ続ける程。
その暖急に富んだハイハットワーク、パワフルなタム回し、アタックの効いたバスドラムは、ソウルだけでなく、ロックとの相性も相思相愛級。
ゲートリバーブを効かした、トリッキーなサウンドメイキングにより、更に存在感を増したトニー・トンプソンのドラムは、このアルバムに於けるもう一つの主役だ。
(この後、LIVE AIDでの再結成レッド・ツェッペリンのドラムの座を、フィル・コリンズと分け合ったのも当然の出来事だ。)
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『THE POWER STATION』による、ヒットチャートでの成功、及び音楽的な高評価を受け、ジョンは当面の目標を果たす。
ツアー直前に離脱したロバート・パーマーの代役にマイケル・デバレスを立て、アルバムのプロモーションツアーを終えると『DURAN DURAN』の活動に戻るのであった。
こうして夢のスーパープロジェクト
『THE POWER STATION』
は活動を終えたのだが、それから10年後、再度彼等は集結し、グランジの嵐が吹き荒れる音楽シーンに身を投じるのである。
だがそにはジョン・テイラーの姿は無かった・・・(to be continued)