決算
簿記3級で学習済みの内容はこちら
2級も決算の流れは3級と同じです。
①試算表の作成
②決算整理
③精算表の作成
④損益計算書と貸借対照表の作成
⑤帳簿の締め切り
◯決算整理
決算整理では2級で新たに追加された項目がこちらになります。
・無形固定資産の償却
・売上原価の算定
・当座預金残高の修正
・有形固定資産の減価償却
・リース資産の減価償却
・ソフトウェアの減価償却
・有価証券の評価替え
・引当金の設定
◯精算表
精算表の作成も3級とほとんど同じで、2級で学習した項目が増えただけなのですが、棚卸減耗損と商品評価損を仕入に振り返る場合と振り替えない場合があります。これは問題によって指示がされており、「棚卸減耗損と商品評価損を仕入勘定に振り替えずに独立して処理する」という文があった場合は仕入に振り返る必要がありません。
例)次の資料を基に決算整理仕訳をし、精算表に記入しなさい。ただし、棚卸減耗損と商品評価損を仕入勘定に振り替えずに独立して処理する。
・期首繰越商品:100円
・当期商品仕入高:500円
・期末繰越商品
帳簿棚卸数量:10個 実地棚卸数量:8個
原価:10円/個 時価:5円/個
期末繰越商品 = 10 × 10 = 100
棚卸減耗損 = 10 ×(10 - 8)= 20
商品評価損 =(10 - 5)× 8 = 40
(仕入)100 (繰越商品)100
(繰越商品)100 (仕入)100
(棚卸減耗損)20 (繰越商品)20
(商品評価損)40 (繰越商品)4
仕入勘定に振り替える場合は次のようになります。
◯損益計算書
損益計算書の形式には勘定式と報告式の2つがあり、3級で学習した内容は勘定式です。2級では報告式が出題されます。ちなみに実際の財務諸表では報告式の方が一般的なようです。
報告式では借方と貸方を分けずに縦に並べて表示します。
・売上総利益
売上高から売上原価を差し引いて計算します。
売上総利益 = 売上高(売上)- 売上原価(仕入)
・営業利益
売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いて計算します。
販売費とは商品の販売に関する費用のことで、広告宣伝費、販売手数料、発送費などがあります。
一般管理費とは会社の管理に関する費用のことで、給料、旅費交通費、水道光熱費、支払家賃、支払リース料などがあります。
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
・経常利益
営業利益に営業外収益を加えて営業外費用を差し引いて計算します。
営業外とは商品売買に関するもの以外のことです。
営業外収益では受取利息や有価証券利息などが、営業外費用では支払利息や有価証券売却損などがこれにあたります。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
・税引前当期純利益
経常利益に特別利益を加えて特別損失を差し引いて計算します。
特別とは稀にしか生じないもので、特別利益では固定資産売却益、貸倒引当金戻入、保険差益などが、特別損失では固定資産売却損、固定資産除却損、火災損失などがこれにあたります。
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
・当期純利益
税引前当期純利益から法人税等を差し引いて計算します。
当期純利益が最終的な会社の利益となります。
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等
まとめると損益計算書はこのようになります。
注意1:商品評価損と棚卸減耗損
商品評価損は売上原価に含めて記載します。
棚卸減耗損は売上原価に含める場合と販売費及び一般管理費に記載する場合があるので、問題文の指示に従ってください。
注意2:貸倒引当金繰入
売掛金など売上債権にかかる貸倒引当金繰入は販売費及び一般管理費に、
貸付金など営業外債権にかかる貸倒引当金繰入は営業外費用に記載します。
◯貸借対照表
貸借対照表も勘定式と報告式がありますが、ほとんどの場合勘定式が使われます。
3級では資産、負債・純資産の2つに分けて記載しましたが、2級ではもう少し細かく分類していきます。
・資産の部
資産の部では流動資産と固定資産に分けて記載します。のちに出てくる負債の部でも流動負債と固定負債に分かれますが、「正常営業循環基準」と「1年基準」で分けていきます。
正常営業循環基準とは
仕入→販売→売上→仕入
という通常の営業プロセスを満たすルールです。これに該当するものは全て流動資産(負債)になります。
正常営業循環基準に該当しない場合は、1年基準によって判断します。1年基準とは1年以内に現金(預金)化できるかどうかです。これを満たす場合も流動資産(負債)になります。
そしてこの2つに該当しないものが固定資産(負債)となります。そのため2年間の賃料の前払いなど、1年を超える期間の費用に関しては長期前払費用として固定資産で処理しますので注意してください。
売買目的有価証券は短期的に売買するので流動資産に有価証券として記載します。
満期保有目的債権とその他有価証券は固定資産に投資有価証券として記載します。
子会社株式と関連会社株式は固定資産に関係会社株式として記載する場合もあります。
・負債の部
先に述べたように負債の部は流動負債と固定負債に分けて記載します。分け方は資産と同じです。
・純資産の部
純資産の部では株主資本と評価・換算差額等に分けて記載します。
株主資本には資本金、資本剰余金、利益剰余金が、
評価・換算差額等にはその他有価証券評価差額金が記載されます。
これらを踏まえて作成した貸借対照表が下図になります。
◯株主資本等変動計画書
株主資本等変動計画書とは、純資産の変動を表す財務諸表です。貸借対照表の純資産の部の各項目ごとに当期首残高、当期変動額、当期末残高を記載します。
問題の解き方としてはまず仕訳をして、そのうち純資産の勘定科目のみ増加と減少を記入すれば大丈夫です。なお減少は△で示します。
例)次の取引について、株主資本等変動計算書に記入しなさい。
①株主総会において、繰越利益剰余金の配当・処分は次のとおりである。
・配当金:200円
・利益準備金:会社法に規定する額
・別途積立金:150円
②新株発行のため10株を1株あたり100円で発行し、全株式の払い込みを普通預金とした。なお、払込金額のうち会社法で認められている最低額を資本金とする。
③A社を吸収合併し、その株主に対して新たに20株を10円で発行し、全額を資本金として処理した。なお合併直前のA社の資産と負債の時価はそれぞれ300円と200円であった。
④その他有価証券の帳簿価額は100円であったが、時価は200円だった。なお、全部純資産直入法を用いる。
⑤決算の結果、当期純利益500円を計上した。
①資本金 × 25% -(資本準備金+利益準備金)
= 3,000×25% -(500+200)= 750 - 700 = 50
株主配当金 × 10% = 200 × 10% = 20
(繰越利益剰余金)370 (未払配当金)200
(利益準備金)20
(別途積立金)150
②(普通預金)1,000 (資本金)500
(資本準備金)500
③(諸資産)300 (諸負債)200
(のれん)100 (資本金)200
④(その他有価証券)100 (その他有価証券評価差額金)100
当期末による仕訳のため、当期期末高に100を記載し、その差額を「株主資本以外の項目の当期変動額(純額)」に記載します。
⑤(損益)500 (繰越利益剰余金)500
◯帳簿の締切
帳簿の締切は簿記3級で学習した内容と同じです。
①収益・費用の各勘定残高を損益に振り替えます。
②当期純利益(純損失)を繰越利益剰余金へ振り替えます。
③資産、負債、純資産を次期に繰り越します。