2022新潟県知事選をじっくり楽しむための参考図書特集②

二冊目は2016年新潟県知事選挙を特集した本です。

新潟県知事選では、どうして大逆転がおこったのか。

目次

第一章 「新潟県知事選」奇跡の逆転勝利
第二章 原子力防災の第一人者、泉田裕彦知事の存在感
第三章 ”米山流原発選挙”で与党敗北
第四章 新潟県知事選は「勝利の方程式」

著者

横田 一
1957年、山口県生まれ。東京工業大学卒。
奄美大島の入植グループが右翼に襲撃された事件を描いた『漂流者たちの楽園』(朝日新聞社)で、1990年ノンフィクション朝日ジャーナル大賞を受賞。
その後、政官業の癒着、公共事業の見直し、族議員など国会議員ウォッチングを続け、安倍政権に対する地方の反乱といえる滋賀県知事選、沖縄県知事選、佐賀県知事選などの選挙も取材。

出版元

七つ森書館

発行年月日

2017年2月1日

読書感想文

 脱原発系の本も多く発行している出版社。出版元の代表者は、核化学を専門とし、「地震」「津波」による原子力災害について90年代から警鐘を鳴らしてきた物理学者 高木仁三郎に師事している。七つ森書館は現在廃業しており、自費出版詐欺との指摘される印税の未払いといった問題も抱えている。
 著者は2017年衆議院議員選挙で小池百合子氏が立ち上げた希望の党が失速する引き金となる「排除」発言を引きだしたフリージャーナリスト 横田一氏。

 こちらの本は先に紹介した一冊とセットで読むことをおススメしたい。時事芸人プチ鹿島氏の例えを借りるなら、2016年新潟県知事選という同じ試合を一塁側と三塁側のそれぞれのスタンド(視点)で見ているような2冊と言える。ファンの敗因分析と勝因分析をそれぞれ半信半疑で両方読む感覚。

 先日の星野県議裏金問題が記憶に新しいが、新潟県ではここ10年を振り返っても大騒ぎの政治関連のスキャンダルが定期的に起きてきた。
そのようなニュースは強く記憶に刻まれるため、新潟県知事選でなぜ原発が争点となっているのか、なぜ泉田氏が4選を断念したのか、なぜ米山知事が逆転勝利を収めたのか、その辺りの記憶がぼんやりしている方も多いのではないだろうか。
 今回の県知事選挙を前に、県民が下してきた原発に対する判断の経緯をおさらいするの上でちょうど良い一冊と言える。
柏崎刈羽原発の安全性が改めて問われる起点となり、福島第一原発の免震重要棟の建設にもつながった2007年 中越沖地震における原発事故。このあたりから今につながる流れは押さえておくと、今回の選挙も味わい深いものとなる。

 また本の中では昨今、注目されている地方メディアの御用新聞化についても問題提起がされている。どこの地方においても、地元紙・地元メディアは地域の政治、経済、社会、文化のあらゆる面で絶大な影響力を持つ。泉田・星野問題では地元の問題にも関わらず新潟日報の記事を読んでいるだけではなかなか背景がつかみづらかった。新潟県民にとって親しみが深い新潟日報が県知事選をどのように取材するかここも見守っていきたい。

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