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2重スリット実験

第四章 量子力学 これまでに行われた実験

第4章 目次

1. 二重スリット実験:粒子と波の二重性を証明
2. 光電効果の実験:光の粒子性を確認
3. シュテルン・ゲルラッハの実験:電子のスピンを発見
4. アスペの実験:量子もつれの存在を証明
5. 量子消去実験:遅延選択と量子の不思議


1. 二重スリット実験:粒子と波の二重性を証明

「たった一つの電子が、同時に2つの道を通る!?」
これはSF映画の話ではありません。20世紀最大の科学ミステリー「二重スリット実験」が明らかにした量子の奇妙な世界です。この実験を知れば、あなたのスマホやゲーム機の裏側で働く「量子の魔法」が見えてきます。


光の謎を解いた19世紀の天才

時は1801年、イギリスの物理学者トーマス・ヤングが世界を驚かせました。暗い部屋でローソクの光を2本の細い隙間(スリット)に通すと、壁に縞模様が浮かび上がったのです。まるで池に石を2個投げた時にできる波紋の干渉のように。
「光は波だ!」
この発見は、ニュートンが提唱した「光=粒子説」を100年ぶりに覆しました。しかし20世紀、アインシュタインが「光は粒子(光子)でもある」と主張し、再び大論争が勃発します。


量子版ヤング実験の衝撃

1961年、ドイツのクラウス・イェンソンが画期的な実験を開始。電子銃から電子を1個ずつ発射し、2本のスリットを通してスクリーンに当てました。結果は衝撃的——電子が1個ずつ到達しても、積み重ねると干渉縞が現れたのです。
「電子が波のように振る舞い、自分自身と干渉した!」
当時の科学者たちは頭を抱えました。電子は1個ずつ発射されているのに、どうやって2つのスリットを同時に通れるのか? このパラドックスは「量子力学の心臓部」(ファインマン)と呼ばれるようになります。


日本の職人科学者が解明

1988年、日立製作所の外村彰博士が歴史的実験に成功。電子顕微鏡を改造し、毎秒10個の電子を1個ずつ正確に発射。特殊な検出器で干渉縞の形成過程を撮影しました。
「まさか本当に縞が…」
実験チームは夜通しモニターを見守りました。最初はランダムな点の集まりが、やがて縞模様へと変化。量子の世界が映像で証明された瞬間です。外村博士は「電子はピアノの鍵盤のような存在。観測で初めて『音』が決まる」と表現しました。


観測者が世界を変える?

最も不可解な現象は「観測効果」です。スリットの前で電子の通過経路を測定すると、干渉縞が消えてしまうのです。ある科学者はジョークでこう言いました。
「電子は恥ずかしがり屋。見つめると素の姿を隠すんだ」
実際には「観測装置が電子に影響を与える」のが原因です。2021年、理化学研究所のチームがV字型スリットで新発見。電子の経路を後から解析できる装置を使うと、やはり干渉縞が消えることを確認しました。「過去が現在の観測で変わる」かのような現象に、研究者たちは今も頭を悩ませています。


量子革命の夜明け

この実験が生んだ技術革命:

  1. 量子コンピュータ:電子の重ね合わせ状態を利用

  2. 電子顕微鏡:物質波の性質でナノ世界を可視化

  3. 量子暗号:光子の干渉効果で絶対安全な通信

グーグルの量子チップ「Sycamore」が従来のスパコンを凌駕したのも、二重スリットで証明された量子の性質があってこそ。あなたのスマホの半導体も、ここから生まれた技術です。


宇宙の謎へ挑む

最新研究では「時間スリット」実験が進行中。空間ではなく時間的にずらしたスリットで、過去と未来の光が干渉する現象を観測。成功すれば、「時間の流れ」の量子論的解明が進むと言われています。

アインシュタインが「不気味な遠隔作用」と呼んだ量子もつれ現象も、実は二重スリット実験の延長線上にあります。2022年ノーベル物理学賞はこの分野に授与され、量子インターネット実現へ期待が高まっています。


あなたも量子探偵に!

この実験が教える真実:

  1. 見えない世界は常識を超えている

  2. 観測者も現象の一部になる

  3. 「どっちつかず」が新しい可能性を生む

次世代の科学者を待つ謎はまだたくさん:

  • 量子重力理論

  • 意識と量子の関係

  • 多次元宇宙の存在

外村博士がカメラに収めた干渉縞のように、科学の道も最初はぼんやりしています。でも一歩ずつ進めば、やがて鮮明な真実が見えてくるはず。さあ、あなたの「知的冒険」のスリットを開いてみませんか? 量子の海は、挑戦者をいつでも歓迎しています。


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