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その間抜けぶりには真に迫るものがあった
大声で悲鳴を上げる。突然、壁面の本棚が決壊したことに驚いて。深夜、午前3時。
昔、とあるシュルレアリスムの芸術家が、高層ビルの窓からグランドピアノを地上に落としたことがあった。パフォーマンスとして。ピアノが地面に衝突したとき、この世のものとは思えないくらい、ものすごい音がしたらしい。
それに匹敵するであろう音が轟いて、約500冊の本が雪崩のように床に散らばった。圧巻である。圧巻の光景に呆然となり、そのまま布団に戻った。夢なら醒めて欲しい、と思って。
朝の7時。窓から太陽の光が入り、部屋の中を明るく照らした。まだ醒めない夢の中にいるようだ。今日の日記はそれ以上のことを書く気がしない。
エミリアの最初のボーイフレンドは間抜けだったが、その間抜けぶりには真に迫るものがあった。彼は多くの過ちを犯し、たいていはそれを認め、修正することができたが、修正不可能な過ちというものがあり、この間抜け、すなわち最初の男は許しがたい過ちをひとつかふたつ犯した。それについては口にする価値すらない。
アレハンドロ・サンブラ (著), 松本 健二 (翻訳)『盆栽/木々の私生活』白水社 ,p.17