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夕立

早朝に目が醒める。窓の外を熱波が襲う。山鳩が一羽、植木の影で目をつむっている。向日葵の首が落ちる瞬間を見た。

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夕方、2人の同僚とオンラインで会議。文京区在宅の同僚のマイク音声に遠雷の音が入る。やがて激しい雨だれの音。そちらは夕立ですか。こちらはカンカン照りですが。

10分後、江東区在宅のもうひとりの同僚のマイク音声からも雨音が聞こえてくる。雨雲が文京区から江東区に移動したらしい。そのうち私の家にも来るかも。ドキドキしながら会議を続ける。

会議のあと、窓を開けてみた。雨が降りそうな匂いがした。ドブのような匂い。匂いだけをあたりに残して、雨は降らなかった。

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マルテの手記』と『ウィトゲンシュタインの恋人』を交互に読んでいる。どちらも孤独な人間の連想とTweetによって紡がれた小説。後者の方が内容に脈絡がない。他人に埋もれる孤独と、他人が存在しない孤独の違いかもしれない。

『ウィトゲンタインの恋人』の後に『マルテの手記』の文章を読むと、リルケの妄想も頭のなかにツルリと入る。そんな気がする。

 クリストフ・デートレフの死はもう何日間もウルスゴーに居座って、あらゆる人たちと話をし、要求を突きつけていた。運ばれることを要求し、青い部屋、小サロン、広間を要求した。犬たちを連れてくるよう要求し、人々が笑うこと、話すこと、遊ぶこと、静かにしていることを、同時に要求した。友人に会いたいと要求し、女たちや死んだ人に会いたいと言い、自ら死ぬことを要求した。要求したのだ。要求し、そして叫んだ。

ライナー・マリア リルケ (著),  松永 美穂 (翻訳)『マルテの手記』光文社,p.24-25

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お盆は海に近づくなと言われるが、夕暮れの海辺には大勢の人がいた。老若男女がいた。犬たちもいた。リードを外された犬たちは、大きな弧を描くように砂浜を走り回った。

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