人間は奴隷でいたいと思うときがあって
1.
イタリアの作家、ナタリア・ギンズブルグは私たちの想像力について次のように語っている。
幸せなときには、想像力がより大きな力を持つ。一方、不幸なときに活発になるのは記憶である。苦悩は想像力を弱め不活発にする。<中略>不幸なときに、自らの生活、心、渇き、浸み込んだ不安から目をそらすのは難しい。過去の記憶が次から次へと浮かび上がってきて私たち自身の声が反響を繰り返すので、それを黙らせることができないのだ。
ナタリア・ギンズブルグ『小さな徳(須賀敦子の本棚) 』,河出書房