Netflix『極悪女王』を一気見した(ネタバレあり)
『画面の向こうにはゆりやんがダンプ松本として存在していた。』
『ダンプ松本、ブル中野、クラッシュギャルズ、長与千種、ライオネル飛鳥』
これらの言葉に馴染みのある世代。
私は昭和50年代前半生まれの人間ですが、おそらく昭和40年代、30年代後半生まれの方々に刺さりまくりのドラマではないでしょうか?
(記事内での敬称の省略、ご了承願います。)
こちらNetflixで独占配信中のドラマで、監督は今日本映画界を背負って立つ監督と言っても過言ではない『孤狼の血』や『死刑にいたる病』、『凶悪』など人の叫びや心のドス黒い何かを描かせたら誰も止められない白石和彌監督。
白石監督の映像は突飛な編集をするわけでも無ければCGを多様に使うわけでもない。
登場人物をじっくりと、迫力のある映像で魅せる、
正統派であり、昔の邦画好きの私としては堪らんテイストなんです。
そんな白石監督と企画、脚本、プロデュースは鈴木おさむという最強タッグのドラマ『極悪女王』。
少し前にゆりやんが病院に行ってって話題になってた時があってその時にこのドラマを撮ってる事を初めて知りました。
登場人物はダンプ松本役、ゆりやんレトリィバァ。
長与千種役、唐田えりか。
ライオネル飛鳥役、剛力彩芽。
主要の3人ですが、この3人の人生をかけた迫真の演技は本当凄かったです。
ゆりやんはそれまでダイエットで45キロ痩せたのに今回で40キロまた太ったと言っていて、この作品にかける情熱をそれだけでも感じとれました。
ダンプ松本、本人が後半のダンプになった時のゆりやんの体つきは、本当にプロレスラーであり、かつダンプの体つきで、後ろから見たら私かな?と思った程で、
また、竹刀の振り方一つでも相当練習したのではないかと、本人が見ても自分にしか見えないと言っていたのが印象的です。
私もダンプ松本を見ていたのは小さい時でしたが、
頭の中にあるダンプとゆりやんが完全に一致しながら見ていました。
それまでポワポワした、ぽっちゃりちゃんだったのに、闇落ち(我が家ではそう呼んでます。)してダンプになってからは、本当のプロレスラーのようなガッチリとした筋肉を脂肪で囲った強靭の肉体をしていました。
ゆりやんは元々俳優というよりかはお笑い芸人なのですが、今回このダンプ松本の役に至っては、演技をしてというよりかは完全に憑依していたように思え、俳優のテクニックやロジカル的なものは一切感じられず、演技をしているというより、憑依。ダンプ松本そのものでした。
本人の松本香が極悪同盟のダンプ松本として今までの自分を殺し、完全悪になりきって頑張って演じてきたと思うんです。
そのダンプ松本を演じている松本香をゆりやんが演じる。
そこの間に少しでも、怯みや、遠慮が生じたらダンプ松本にならなかったし、
ゆりやんとダンプの間に俳優と女子プロという枠だけで話をしていたら、このような大作はできていなかったと思う。
ましてや俳優として手慣れた演技もなくて良かった。
とある俳優のインタビューで、「俳優業をこなして、俳優として演技が上手い、主演をこなすようになり、若手から中堅になったと言われるようになればなる程、自分の中で大事な何かを無くしてる気がするんですけどね。」と。
ゆりやんが元々俳優業ではなくてお笑い芸人で、ダンプを演じたというのは奇跡のキャステイングだったのだと思っています。
泣く瞬間も表情も台詞回しも全て作られたものが無く、演技をするというよりかはダンプになりきって生きている。そう思えました。
勿論、演出の面でも何回もTakeを重ねたところもあったと思いますし、セリフの言い方など細かい指導が入ったとは思いますが、ゆりやんの中から自然に生まれて出てきた言葉に、少なからず私には聞こえました。
画面の向こうにはゆりやんがダンプ松本として存在していると、そう感じました。
このドラマでの最大の見どころはやはりリングでの戦いですが、最後の髪切りマッチのダンプ松本並びにクラッシュギャルズ役の方々には、尊敬の念を描く程に皆さんの命懸けの演技に心を打たれました。
当時のクラッシュギャルズが命懸けでプロレスをしてクラッシュギャルズとして生きていく必死さが、剛力彩芽と唐田えりかとの俳優としてこの作品にかける思いとリンクしたものがあって、ガムシャラに全身全霊で役を生きているのが伝わってきました。
偉そうな言い方をしますが、一視聴者として、俳優さんが役にどれだけ自分自身の魂をこめてるか気持ちを込めて演じているか、不思議と画面を通して伝わってくると思っています。
それは俳優本人だけじゃなくて、頑張ってる俳優に対していいものを作ろう!
これだけ頑張ってる演者をもっとよく撮ろう!という現場の雰囲気ですら感じ取れる気がします。
気合いや思いだけでいい作品が作れるとは思いません。
ただの仕事にそこまで命かけなくても、という意見もあると思いますが、少なからずこの『極悪女王』は演者の気迫ある演技、その演技を一瞬でも逃すものかと撮り続けるカメラ、この作品を少しでも良くしようとする監督、演出、脚本、編集、美術、照明、、、もうスタッフ皆さん、そしてこの作品を一人でも多く見て欲しいと宣伝し配信するNetflix。
皆さんの沢山の強い思いが詰まった作品だなと感じ取れました。
ラン丸でした