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わたしは両側から人生を眺めてみる

立冬。お部屋の隅でちんまりと佇んでいたストーブの埃を拭き、コンセントを繋ぎ、電源をつけた。6畳ほどしかない部屋があっという間にあたたかくなる。それだけでほんの少し冬と仲良くできそうな気がしてくるから、やれやれ、相変わらずわたしは単純だな〜、なんて他人事のように思ったり。澄み渡った空気、写真を撮り誰かに送りたくなってしまうほど綺麗な三日月と一番星。すこし気になってる相手と、寒いねって呟きながら歩く夜の道。鍋からくゆる良い匂いの湯気。12月1日に解禁する、クリスマスの洋楽をあつめたプレイリスト。あたたかい色味のふわふわしたマフラー。冬の好きなところは沢山あるけれど、頑張って好きなところを見つめながら生きてないと、すぐに気持ちが萎れてしまう。今年の冬は、さて、どんな出来事が待っているのでしょう。

最近とてものんびりとした日々を過ごしていて、それはそれは、ゆったりまったり生きている。忙しすぎるのとか、マルチタスク的なものが得意では無い人間なので 順風満帆かと思いきや、全然そんなことは無い。贅沢なのは分かっているけれど、実家でのんびり、やることもなくグダグダと過ごしている自分を、脳内の自分がしっかりと責めている。そりゃ忙しい期間もありゃ暇な期間もあるのが人生というか、職業柄そうなるのは自然なことだし、勉強することなんて山ほどあるのに、そういう方向には気持ちが向いてくれない。やる気というのは自然発生するものではないらしいけれど。

一昨々日、夕飯を食べている時に "CODA あいのうた" という映画を観た。主人公は高校生の女の子。両親とその兄は聾者で、それゆえ幼い頃から 手話で通訳をするのが当たり前の環境で生きてきた。学校に行く日も、朝早くから船に乗り、漁をする父と兄を支えていた。彼女は歌うことが大好きで、でも耳の聞こえない家族は、彼女の歌を聞く術を持たない。だけれど、やっぱり、歌と生きていきたいという気持ちを捨てることはできなくて。

話は進み、彼女は音大を受験することになった。というか、諦めていた道を、父親が無理やり引き戻してくれた。その受験会場で彼女が歌う Both Sides Now (青春の光と影) に、わたしたち家族はつよくつよく胸打たれた。涙が止まらなかった。こっそりホールの2階席に座っている家族に向け、歌いながら手話で歌詞を紡ぐ彼女の姿は、愛そのものだった。

映画を観た翌日、母がBothSidesNowのピアノ伴奏を耳コピしようと頑張っていて、結果的にわたしが引き継ぐような形で、一昨日の深夜、ひたすら曲を聴いては、楽譜を書いた。それだけに留まらず、訳詞をノートに書いたり、英語の歌詞を筆記体で綴ってみたり、なんだかもう、ひたひたで。そんな風に何かに必死で取り組むと、自然と自分の中のエネルギー循環もうまくいきだして、久しぶりに本職の楽器の方にもきちんと向き合えた。
本当に単純ないきもの。愛おしい日々。


1.2番の歌詞


3番の歌詞

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