ちきゅうはこわい
真っ暗な宇宙を飛行していると、青と緑の、美しい星を見つけた。表面に浮かぶ、白い模様は絶えず形を変え、ワタシを誘っているようだった。
初めて見る、美しい星。その魅力に惑わされ、ワタシは宇宙船の進路を、その星へと向けた。
・
星の中を進んでいく。白い模様に見えたものに近づくと、どうやらそれが立体的であることに気がついた。
しかし、サンプルを採ろうと宇宙船のアームを伸ばしても、なぜか掴むことができない。何度か挑戦してみても無理だったので、仕方がなく諦めた。
・
白いものを越えて、さらにその下を覗くと、そこにはまた暗闇が広がっていた。宇宙と同じ、いや、もっと黒い闇だったかもしれない。
だが、目を凝らしてみると、暗闇の中に金色の光が見える。
「なんだろう。もしかして、この星は宝石でできているのだろうか。」
期待に触覚を踊らせて、ワタシは白いものの先へと進んだ。
・
やっぱりだ。キラキラとした無数の光が、宇宙船の下を覆っていた。未知の星で見つけた、名前も分からないたくさんの宝石たち。
「これを持ち帰ったら、みんな驚くだろうな。」
ワタシは宝石を手に入れるため、宇宙船のアームを下へ下へと伸ばしていった。
ガコンッ!
何か硬いものに、アームがぶつかる感触がした。
「よし!いいぞ!宝石にアームが届いたんだ。」
今度は、アームを下に降ろすのを止め、宝石をすくいあげる。少しの抵抗はあったものの、アームは無事、宝石をすくいあげることができた。
・
と、思ったのに。すくいあげたとたん、宝石は輝きを失ってしまった。
キラキラ光る宝石だと思っていたものは、すくいあげてみると、ただの瓦礫のようだった。何度やっても結果は同じ。
・
そこでワタシは気づいた。ここは「マボロシ」でできた星なのだと。
すべての美しいものは、宇宙を旅するモノたちを、惑わせるためのワナだっのだ。下に降りていったら、地の底に住んでいる未知の生物に捕獲され、食べられてしまうに違いない。
・
真実に気がついたワタシは、その星から命からがら逃げ出した。
後で調べて分かったのだが、あの星は「地球」と言うらしい。地の底に住む、怪物たちの星。
キミたちは、絶対に近づくんじゃないぞ。