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土星のリズム

「臨界点」

そう言葉を発したのは剣道部の小林くんだ。

面がずれ、点と線が繋がる。

幾つもの境界線が崩れ始め一つになった途端、裏と表が真逆の憎悪を掻き立てる。

めいいっぱい引き留めたが、受け入れてもらえない。

「カッターを研いでいてあげるから、天日干しをしてある大海原を取ってきなさい」

「まだ時間はあるさ」

躓いたトロッコの面倒は見てやらない。

腐海に満ちた表情が伝統的な布に包まれ、川路に飾られた。

いつの日か兄弟は街を離れ、焚き火売りの元へ肋骨を伸ばした。

けれども今一度、芳醇なワインを千切りしたりはしないと宣言しよう。

そんなことをしてしまえば、八重歯の温もりを忘れてしまうから。

道場破りの大黒柱には、昨日も平らな飛行艇を調合させた。

だがまだ足りない。

いくら歩いても砂丘の港には辿り着く気配がない。

星々の宿屋は今日も忙しい。

引っ切り無しにコスモスが横入りをしてくる。

「剽軽な野郎だ。今日も踊っていくかい?」と、覇王樹の花が言った。

「水溜まりにもなれない場所には興味がないね」

美しい光の束がひたすらに拡散していく。

「昨日の道草はなんだったのだろう」

小言を繰り返す鳩。

枝豆の読解力を舐めてはいけない。

「鉱石すらも折れ曲がる力がどこにあるんだ。遠慮はいらない」

「鼠も足音に勘付いているさ」どこに逃げたって、面の茹で加減は引っ張り凧になる。

「どこまででも行くさ」

コンタクトレンズの中でルーレットをしていた時を思い出す。

「そんなの如何様に違いない」

「清涼飲料水だって、日に日に窶れていくさ」

皺が伸びて、土星のリズムが変わった。

機関車は泳ぐ。

風の子守唄。

「東がどうも怪しい」

と。

先人たちの残してきたものはゲル化した。

都心に近いエネルギーにも負けない。

頂点を掴む太陽たちは、いつまでも意味深な座り方をレクチャーして、くるもの拒まず只管こちらを睨みつけている。


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