六角レンチの網目
キタキツネの遠吠えが懐に一つ。
等速直線運動をしようと少年が瞬きを繰り返す。
今、食べかけの鉄格子が頬を照らす。
北極点の弱点はカラスの飛び方さえも超越してしまう。
花の尾は引きずるほど膨れ上がり、丁度食べ頃になった時には暗闇の中で呆然と感情が裂けるだろう。
光の先っぽを摘んで伸ばす。
館の守り人が吐息を引き連れて近づいてくる。
「お代はいらないよ。その代わりつま先に絡み合ったブルーサファイアを解き、決壊したダムの跡地に照準を合わせてほしい」
不思議と木こりは頷いた。
周囲の桜前線もおとなしく声をかけてくる。
薬屋さんは靴下を裏返し、毛玉を取り金魚鉢を作り上げてしまう。
永遠の鏡を引き取ってくれ。
相当こちらも嘆いている。
扇風機の羽根さえ欲しいというのに。
「六角レンチの網目なんざ話にならない。比べるものじゃあないさ。ただわかって欲しくて氷の溶け具合を観測していた」
顕著に現れるボーダーライン。
「団結していた電柱たちも、今じゃカナリア達の仲間入りだ」
どれだけ針の穴を見つめようと、深海の溝にはある程度道筋が立っている。
ドーナツも一緒の原理だと。
「オゾン層の裏側には殆ど期待していない。滑り止めが命綱だ」
堀の中に入ると、よく焼けた墨汁がたらり。
延命するつもりはないが、記憶違いの万年筆は必要だ。
特にこの冬は一旦舵を切って、問答無用に朝を待ってみよう。