社会的影響力が急拡大するAIの現状を調査した「AI Index Report 2024」をスタンフォード大学が公開
人工知能AIは、生成AIの登場によりますますニュースに登場することが増加し、良い面でも悪い面でも世界への影響力を拡大しています。このAIの現状をスタンフォード大学が毎年詳細に分析しています。この4月に最新レポートの「AI Index Report 2024」が公開されました。全編502ページの中から私が興味を持った経済面ほかについてまとめてみました。
1.要約
第1章: 研究開発
2023年における重要なAIモデルの開発を国別にすると、アメリカが61で、EUの21、中国の15をリード(図1)
2021年から2022年にかけて世界のAI特許付与数が62.7%急増
2010年以降、付与されたAI特許の数が31倍以上に増加
2022年: 中国が世界のAI特許の61.1%を占める (アメリカは20.9%)
2010年以降、アメリカのAI特許シェアが減少
第4章: 経済
1. 生成AIへの投資の急増
全体的なAIへの民間投資は減少するが、生成AIへの資金調達は前年の約8倍の252億ドルに達する。(図2)
OpenAI、Anthropic、Hugging Face、Inflectionなどの主要企業が大規模な資金調達
2. AIへの民間投資でリーダーであるアメリカの先行
2023年のアメリカのAI投資は672億ドルで、中国の約8.7倍
中国とEU、英国のAI投資は減少、アメリカは22.1%増加
3. アメリカと世界におけるAI関連の雇用減少
4. AIによるコスト削減と利益増加
42%の部門でAI導入(含む生成AI)によるコスト削減達成(図3)
59%の部門で利益が増加
コスト削減報告数が10ポイント増加し、AIによるビジネス効率向上を示唆
5. AI民間投資総額の減少と新規資金提供企業数の増加
世界のAI民間投資は2年連続で減少するが、下げ止まりつつある
新規資金提供AI企業数は1,812社に急増 (前年比40.6%増)
6. 企業におけるAI使用の増加
55%の企業が少なくとも1つの事業部門または機能でAIを使用 (2022年: 50%、2017年: 20%)
(注目テーマ)産業別増益予想と国別生産性向上予想
・特に生成AI適用による産業別の増益予想(図4)が出されており、IT産業を始めとして、金融、医薬品、教育、通信、医療に増益をもたらすと予想
今後10年間で、AI導入による年間生産性向上を国別に予想(図5)すると世界平均を超えるのは先進国が多く、順位では、香港(地域)、イスラエル、日本、英国の順となる。なお、この生産性向上はAIにより代替された労働力が新しい職種により吸収されて全体としての生産性が向上することによるもの。
第5章: 科学と医学
AIによって科学の進歩が促進されている
2023年にはアルゴリズム改善AI「AlphaDev」(人間の思いつかないアルゴリズムを提案)や、新素材発見AI「GNoME」(220万種類の新しい液晶構造を発見)といった科学を前進させる能力を持ったAIが発表された。
2.まとめ
スタンフォード大学の最新レポート「AI Index Report 2024」の注目点を整理してみました。大規模言語モデル(LLM)などの生成AIが、資金と人材などの資源を集めて技術的/経済的な飛躍の直前にあること、それだけに問題点も山積していることを感じました。残念ながら日本に関する記述は殆どありませんでしたが、今後は、見出し画像の大谷選手の様な日本企業の活躍を期待しています。画像を提供頂いたunepen様ありがとうございました。
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