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生成AIは優秀な経営者になれるのか? (ChatGPTを活用した経営意思決定)
1.この記事を書いた動機
企業でのChatGPTを始めとする大規模言語モデル(LLM)の活用を調べる中で、世界50ヵ国以上のビジネス・リーダーが愛読するマネジメント誌『Harvard Business Review』の記事「ChatGPTのより良い判断への活用」「Using ChatGPT to Make Better Decisions」August 24, 2023 が、目に留まり、良く論点を整理していると感じたので概要をまとめました。
なお、以下では簡易化のため大規模言語モデルLLMのことを代表したものとして「ChatGPT」と記しており、内容は他のLLMにも当てはまります。
2.要約
意思決定プロセスには3つのステップがある。意思決定の枠組みを設定すること、選択肢を生成すること、選択肢から選ぶこと。
ChatGPTは、このプロセスの各段階を支援できるが、ChatGPTに単純に答えを求めるのではなく、各段階で考慮すべき事項を思いつくのを助けたり、考えつかない選択肢を提示したりすることに真価がある。
ChatGPTは、意思決定の枠組みを設定し、意思決定を行うのを助ける脱バイアスツールとして機能する。
3.ChatGPTの意思決定への活用
ChatGPTは経営者の意思決定を改善できるか? と尋ねると自ら答えてくれました。
「はい、情報、事実、分析、視点などを提供することで、情報に基づいた意思決定を支援できます。」ChatGPTは、マネジャーや企業の強力な意思決定ツールになりうるのです。ただし、単純に答えを提供することにあるのではなく、より体系的な意思決定プロセスを支援することにあります。
4.意思決定プロセスの3段階
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意思決定には、3つの段階があります。
第1に、目標とコンテキストを定義することです。意思決定の対象は何か、どのような目標、価値観、優先事項に基づいているかを定義します。これにより、意思決定問題を定義し、意思決定の枠組みを設定します。
第2段階は、広く選択肢を生成することです。どのような意思決定オプションが利用可能かを明らかにするのです。ここでの目標は、多くの異なる代替案を生成します。良くありがちなのは、明白なオプションにだけに焦点を当てることことです。十分なオプションを意思決定の枠組みから開発した後でのみ、それらを評価できます。
最後に、第3段階で情報に基づいた意思決定を行います。
ChatGPTは、現在でも経営意思決定の3つの段階すべてで価値のある情報を提供できます。
5.脱バイアスツール
ChatGPTは、この場合に選択肢を完全に評価できるのではありません。しかし、自分自身の知識の偏りを明らかにし、事前に考えられた概念に異議を唱えるのに役立つことができます。ChatGPTを賢く使うことで、脱バイアスツールとして、選択肢をより適切に評価するために考える材料を提供します。
考えつかない選択肢
今日、ChatGPTの価値の高い使い方は、自分では考えつかない追加の選択肢を検討することです。意思決定の地平線を広げ、利用可能な意思決定の選択肢が自分たちが気づいているよりもはるかに多いことが分かります。
例えばサプライチェーン改革ならば
例えば、中国への生産依存を減らし、サプライチェーンを多様化するにはどうしたらいいでしょうか? その経営者には初めての課題かもしれません。しかし、ChatGPTは、同様の状況にある企業が文書化した多くの戦略を提示し、よくあるベトナムへの生産移転ではない、斬新なアイデアを思いつくかもしれません。 これは、ChatGPTが業界または企業の公開可能な選択肢の宝庫にアクセスできるためです。
6.ChatGPTを経営判断に利用する利点
ChatGPTには、いくつかの利点があります。自身の利益を追求したり、上司を喜ばせたりすることを目的とすることはありません。組織内部の狭い思考や官僚的政治の影響を受けず、外部の経営コンサルタントや内部の戦略部門よりもはるかに安上がりです。これはまた、ChatGPTが中小企業の意思決定の準備と支援をより安価にすることで、大資本との競争の場を平準化することを意味します。
7.経営実例を学んだ未来のChatGPT
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経営ケーススタディからの学習
ビジネススクール卒業生は、すでに多数のケーススタディを通じて意思決定について学んでいます。 目的は、意思決定方法内での行動の可能性のある選択肢を開発および評価することによって、自らの意思決定方法の幅を広げることです。 もちろん、ケーススタディには、特定の意思決定状況への完璧な答えが含まれているわけではありません。 ケーススタディでは、質問が提起され、意思決定の方法が提示され、意思決定の選択肢が概説されます。 これらのケーススタディから学ぶことができるだけでなく、ChatGPTを訓練するためにも使用できます。
ケーススタディの秘密性・・・DecisionGPTとは
しかし、ChatGPTには、公開されているケーススタディのごく一部しか読み込んでいません。 実際のデータは独占的であり、ケーススタディを持つ非営利のケースセンターに保存されています。 これらの管理者がChatGPTと組むことで多くのケーススタディを学習することにより、今日のChatGPTから、私たちが「DecisionGPT」と呼ぶことになる可能性のある、さらに強力な未来のAIになるでしょう。
ChatGPTの大きな強みは、類似の状況を比較および対照することです。 これがまさに、多くの経営判断において最も重要です。 直面する意思決定のほとんどはユニークなものでは無く、 過去には同様の選択が多くあります。 それを学習できれば、「DecisionGPT」がより適切な意思決定のための強力なツールになります。
経営判断の自動化
最終的には、「DecisionGPT」の進化によって、このような経営判断の多くを自動化できるようになるでしょう。 それまでの間も、現在利用可能なAIツールを使用して意思決定プロセスを改善するマネージャーが有利になります。 ChatGPTに答えを求めるのではなく、意思決定プロセスの各段階で活用することが大切です。
8.感想
冒頭の要約に述べられている通り、ChatGPTに代表される大規模言語モデルは、単なるEメール、レポート作成、校正だけでなく、経営判断においても重要な道具となる可能性があることがわかりました。
特に、自分では思いつかない選択肢の作成やリスク管理、さらに進んで、新規事業やM&Aの選択肢の検討などすぐにでも使えます。標題の「生成AIが優秀な経営者になれるのか?」の答えは、今後、多くの文書化された判断実績がある既存事業では、自動化も進められるかも知れませんが、新しい事業では高速で経営者の判断材料を揃えるという形での活用になりそうです。
以下のChatGPT技術関連記事/動画も参照下さい。