【ニュース】経営再建を目指すユニチカ

2025年1月5日 08:34

今回解説するのは、再建支援が決定したユニチカさん。

野球でいえば、5点ビハインドで迎えた9回裏ツーアウトくらいのピンチ、逆転のために監督とスポンサーを変えて、ベテラン選手も引退するような状況、まさに生き残りを賭けた最後のチャンスと言えます。

いったいなにが起きているのか、解説していきます。

ユニチカとは

ユニチカはかつての三大紡績の一角、日本の繊維業界を牽引した名門企業です。

現在では、繊維だけでなく、高分子や機能資材事業にも展開しています。

しかし今や収益力の低下に苦しみ、前期は54億円の最終赤字、今期も103億円の赤字を見込んでいます。

自己資本比率も20％を下回り、経営を立て直すためのお金すら調達できない、がんじがらめな状態でした。

そして11月末、いよいよ自助努力による資金繰りの維持が困難となったため、官民ファンドによる再建支援が決定しました。

ローンの返済が立ち行かなくなったので、当面の資金を親に工面してもらう、みたいな話ですが、株主にとっても非常に厳しい内容です。

というのも、再建に伴いC種優先株式が大量に発行され、この優先株式は将来的に1株につき4株の普通株式に転換可能ということで、早い話、800パーセント近い株式の希薄化が生じるようです。

ドケチが作るカルピスみたいな希薄化率ですが、当然ながら今回の公表を受けて、株価も急落しています。

いったいなぜこんな事態に陥ってしまったのか。根本的な原因は、繊維事業からの転換が遅れたことです。

というのも、繊維事業全体が安価な中国品に押されて苦境に立たされる中、東レ、帝人、東洋紡など繊維を祖業とする競合は、事業の転換や多角化を早期に進めてきました。

しかしユニチカは構造改革が遅れに遅れ、繊維や機能資材は赤字が続いていました。

富士フイルムの写真フイルム事業、またartienceの印刷インキ事業などもそうですが、やはり化学・素材メーカーと言うのは、環境の変化に対応できるかが運命の分かれ道となりますね。

で、今後については、祖業であり売上高の4割を占める繊維事業からは撤退、ユニチカの技術を活かした高分子事業や無機系素材事業に集中する計画です。

2028年3月期には全事業黒字化、2030年3月期には営業利益約65億円を達成する目標としています。

社長含む取締役は退陣の方針のようで、この辺りは潔いですね。ただし債権放棄や資金支援により延命こそできているものの、やはり市場からの信用は厳しくなります。

収益回復ができなければ、いよいよ経営継続が困難になりますので、生まれ変わりに向けた最後のチャンスをつかめるか、注目しましょう。