大人になったら大切な人とはなかなか会えないんだから
みんなは怖くないんだろうか。
大人になって、大抵の人は実家から出ていくようになる。
そうなると、あれだけ嫌でも顔を合わせていた家族に会う機会は格段に減るわけだ。
働いてると学生のときみたいに気軽に、かつ長期間帰省できるわけではない。
あれだけ顔を合わせていたときに親孝行の気持ちや感謝の念があれば良かったのに
皮肉なものでそのときは"思春期"が重なっていたからそんな気持ちは持ちたくても微塵も湧いてこなかった。
離れてなのか、歳をとって互いに丸くなるからかは分からないけど、
大人になってしまって、残りを数える方が少ない今更になって
親への労りの気持ちを感じ始めるのだ。
大人になることが、みんな怖くないんだろうか。
確実に迫ってきている別れの瞬間を
想像するだけで耐えきれない。
夜ごはんを作って、お風呂掃除をして
洗濯物を干して、買い物を手伝って重たい荷物を持って帰って
マッサージをして、少しばかりのプレゼントを贈って。
それで、間に合うんだろうか。
友人との時間も、家族との時間も、パートナーとの時間もどれも失うのが怖い。
いつからか、帰りの新幹線の中で
関西へ渡る途中の、澄んだ穏やかな瀬戸内海を眺めている間
涙が溢れて止まらなくなるようになった。
思い出なんて何にもならない。きっと時間が解決してくれることなんか無くて、ずっと癒えないぽっかりと空いた穴を埋めるように
その日を耐えながら生きてかないといけない。
こんな気持ちを、みんなどう向き合って
受け止めているんだろう。
だから家族を作って、愛された記憶やもらった温もりを繋いでいきたくなるんだろうか。
祖母が80歳になった。60歳ぐらいのままで止まってたけど、自分が25歳なんだから追いつくはずがないよね。
どんな形で返していけるんだろうと悩むけど、でも、少しでも悔いが残らないようにと、出来ることをしていこうと決意を固められたなら
大人になることは、悪くないのかもしれない。