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忘れたり、書きとめたり。

近くを散歩している時、お風呂に入っている時、電車を待っている時、寝起きにベットでゴロゴロしている時、色々なことが頭に思い浮かぶ。

何かにメモしておこうと思ってスマホをつけると忘れている。

惜しいことをしたと残念がる。さっきの思いつきで、ちょっといい感じの記事が1本書けそうだったなあ。


そんな思いつきを捉えるために、昔から世の中には様々な工夫がある。

ハムレットも紙とペンを持ち歩いているし、私がメモしようとしたスマホのアプリだってそうだ。

人間は一生懸命、忘却と戦っている。


夢の記憶となるともっと脆いもので、寝起きのちょっとした動作ですら内容を忘れさせてしまう。

夢も散歩中の思いつきも、自分の中にありながら無意識に思い出されるものという点では同じなので、夢の内容をメモしていたことがある。夢日記というやつだ。

しかし夢日記は、やってはいけないことである。自分の奥底に潜む無意識を直視するのは、魅惑的であると同時に危険なことでもあるのだ。

どうやら人間には、忘れてしまった方がいいこともたくさんあるらしい。


「有用な思いつきだから書き留めるのであって、夢なんて価値のないものを捉えようとするなんて馬鹿だ」というのは至極真っ当な意見だと思うが、どこか喉の奥に引っかかるような違和感が残る。

何かを書きとめるということは、程度の差はあれ病んでいるような気がしてならない。

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