#10 最後の無料記事「ベテランゲストと新米ガイドの関係性」
はいさい!今回の記事は今頑張っている若手のインストラクターさんにはもちろん読んでもらいたいし、お気に入りのお店があって通っていらっしゃるゲストダイバーさんにも、若手ガイドの苦悩を温かく見守ってほしいのでぜひ読んでもらえたら嬉しいなという内容となってます。
そういえば石野、先日「全国のインストラクターの兄になる!」と
高らかに宣言して小さなグループを作ってみました。
石野がこれまで10年以上ダイビング業界で邁進してこられたのは確固たる目標を設定し、それに向けてマインドを強化してきたからに他なりません。
新たに作ったグループでは、そのマインドを共有し、一生をかけて海と向き合っていく気概のあるネイチャーガイドを育てていきたいという思いがあります。
日本各地に散らばるメンバーで構成されるので、こうしたら絶対にうまくいくよ!なんていう小手先のスキル公開をするグループではありません。
また、独立しようなんてことは言わないですし、現地サービスと都市型ショップの区別があるわけでもないです。
いま置かれている各々のポジション、境遇の中でどうしたら自分の存在価値を高めていけるかをみんなで考えていこうという趣旨です。
そして、さらに下から上がってこようとする若い世代の先輩として、新たなお兄ちゃんお姉ちゃんになってくれる人材を育てていきたい。
それと、これはもちろんですが、グループ内のメンバーが沖縄に来てくれたら全力でおもてなしするよ!という特典があります。
やはり、会って話す!が一番温かいし、モチベーションになるからね。
話すといえば、先日インスタで若手インストラクターさんから突然「石野さんとお話がしたいです!」とDMをいただきました。
「いいですよー」と返事したところ、「早速ですが質問させてください」と。
その質問というのが
「自分より経験豊富なダイバーの方と潜った時にそのゲストに対してどんな存在価値と経験を提供できるか」悩んでます!とのことでした。
これ、石野も下積み時代に悩んでいた時期がありました。
来店されるお客様の多くは親方にガイドをしてもらいたくて来てるのに、
こんなペーペーにガイドされて、しかも同じ料金を払ってもらうなんて。
しかも、1,000本以上潜っているお客様ばかり。
そんなベテランダイバーを相手に何を見せていいのか分からない!
と悩んでいました。
今日はその時の自分に教えてあげたかった重要なマインドを記事にします。
①今そのポイントを潜り込んでいるのは自分だという自信
これは2年目の途中でふと気づいたことです。
「たとえ2000本の経験があるお客様でも、昨日そのポイントには潜っていない」
現地サービスのスタッフであれば特にこのマインドはもっておくべきものです。
毎日海に潜っていると、昨日はいなかった生物が今日になって見つかったということがよくあります。
ベテランのお客様はそういう捕捉情報こそ求めています。
そうであるにもかかわらず、ただ生き物を紹介しただけでは、お客様の方が知識も経験も豊富だった場合にもしかしたら「見たことあるから他のものを紹介して」となるかもしれません。
※そんなことをいう人はそもそも1000本も潜っていないので、単に生き物を紹介するだけでも十分楽しんでいただけるはずですが、きっとこのことに気づけるようになるのは30代を過ぎたあたりでしょうからそれはおいといて
なぜ補足情報が重要なのかというと、
私が理想とするダイビングネイチャーガイドの仕事を一言で表すと、
「旬の生物を紹介する」
だからです。
生の情報に価値があるのです。
去年も同じところに同じ幼魚が住み着いた、や
今年は例年よりこの種の幼魚が現れるのが遅かった、とか
今まで見られなかった種が近年の温暖化の影響で見られるようになった、など
そのポイントならではの補足説明をすることにこそ、ガイドという仕事の役割が出てくるのです。
毎日同じポイントに潜ることが難しい都市型といえど考え方は同じです。
季節ごとの旬だったら局所的なポイントでなくとも、広くエリアでくくれば見えてくるはず。
もちろん、そういった補足情報をお客様に伝えられるようになるまでにはそれなりの経験が必要です。その実力がつくまでは、がむしゃらに潜り込まなくてはいけません。潜り込める状況でないなら情報収集です。
②任せても大丈夫というオーナーからの信頼
そして、これは今だから言えるというか、当時は考えていなかったことで
独立してから振り返って気づいたことがあって。
オーナーからガイドを任されているということの意味に気づくと気が楽になるんです。
経営者であるオーナーは、お客様にまた来店していただかなくてはいけません。
ベテランのお客様に実力のない若手を担当させてクレームがついてしまっては今後の集客に響きます。
つまり、任されたということは、担当させても大丈夫だというオーナーからの信頼でもあるわけです。
自信を持ってガイドすれば大丈夫
全力でガイドすればお客様はその努力を認めてくれます。
※認めてくれるというのが大事
その代わり、オーナーの顔に泥を塗るわけにはいかないのでしっかりと準備しなくてはなりません。
もちろん、それでもお客様に満足いただけないこともあるでしょう。
失敗することもあるだろうし、思わぬ誤解を招くこともあるかもしれません。
大切なお客様を1人失った分は別のお客様に捧げればいい。
かくいう石野も後悔してもしきれない失敗を何度もしてきて今があります。
③ガイドはゲストが育てるもの
石野が下積み時代にお客様から
「ガイドはゲストが育てる」と言われたことがあります。
※これに関しては深堀したいテーマのひとつなので詳しくは改めて記事にします。
さきほどお客様が"認めてくれる"としたのには理由があります。
何千本と潜っているダイバーは世界各地で潜っている可能性が高く、年齢層も高いことでしょう。
そんなベテランダイバーはいろいろなお店でいろいろな若手スタッフを見てきているはずです。
若手に経験と知識が乏しいのは当たり前のことで、それはお客様だって重々承知の上で遊びに来てくれています。
努力の成果を全力で見せようとしている若手にクレームをつけるお客様はいません。
優しく見守ってくれているうちに、お客様からのリクエストに応えようとさらに知識を積み重ねていけばいいのです。
いつか"認めてくれる"から"楽しんでもらえる"日が訪れる
はずです。
その時に、見守ってくれてきたそのお客様に最高のガイドをして差し上げればいい。
ちょっとかっこいい締め方をした気がしますがまだ続きます。
④ガイドが楽しんでいることが一番のサービス
石野が下積み時代のラストに研修でいったセブに白石拓己さんという方がいました。
若くして亡くなられてしまったのですが、兄貴と呼べるくらい尊敬していて、今でも後を追いかけ続けているスーパーガイドです。
白石さんのガイディングは、誰よりも海を楽しんでいることが感じられるものでした。
まさに自由奔放。
とにかくやりたい放題でした。
楽しみ方が突き抜けすぎていたので、その楽しさが周りにも伝播していたんです。
多くのお客様が白石さんと潜るために集まっているという感じで、
こんなガイドがあったのか!と衝撃を受けたのを覚えています。
自分もこうでありたいと夢見たものです。
ここでちょっと一旦考えて欲しいのですが
1日のダイビングフィーがだいたい2万円だとして、
お客様はつまんなそうなガイドと楽しく潜ってるガイドのどちらにそのお金を払いたいと思いますか?
楽しそうなガイドと潜った方が自分も楽しくなれそうですよね。
そっちにお金を払いたいと思う方が当然です。
レジェンド級のガイドさんだったら知識と経験にお金を払う価値があるのですが、若手にそんな価値はありません。
若手の価値は勇気と元気!
毎日がむしゃらに潜って、毎日新しい発見をして楽しんでいる姿は絶対にお客様に伝わります。
当時、セブでの研修から帰国した石野くんは残りの修行期間で、ただ好きなことを突き詰めることにしました。
今振り返ってみると、あれは若者特有の自由のはき違えだった感が否めないのですが…。
それでも石野が独立してすぐ沖縄に遊びに来てくれたお客様は、その時のガイドが楽しかったと思って来てくれた方々でした。
修業時代を知るお客様と数年ぶりに会った際には、「当時のしょうたくんから海が好きだって気持ちが伝わっていた」と言われました。
あまり愛想を振りまくのが得意ではないタイプの石野は、それまでそんなこと言われたことがなかったので、嬉しくて泣きそうになりました。
見てる人は見てくれています。
ネイチャーガイドにとって一番大切な仕事は、
自分の感動や楽しみ、知識をお客様へ伝えることです。
そこに経験本数は関係ありません。
どう楽しいのかをどう伝えるかについて一所懸命考えてください。
⑤まとめ
あらためて、いただいた質問は「自分より経験豊富なダイバーの方と潜った時にそのゲストに対してどんな存在価値と経験を提供できるか」というものでした。
若者の存在価値、それはズバリ
伸びしろ
です。
自分が成長していくストーリーにお金を払ってもらってください。
どんな経験を提供できるかに関しては、ベテランダイバーの知識と経験をすぐさま超えることはできないので
フレッシュな情報と熱意
で乗り切るしかありません。
潜り込んで自分なりの生の情報を手に入れるか、
先輩やオーナー、他のショップのスタッフさんたちと交流して情報収集することです。
幸い、石野が修行をしていた八丈島は他店のオーナーやスタッフとの仲が良く、休日には一緒に潜りにいくことが多かったんです。
相談すればアドバイスくれるし、何気ない会話にもめちゃくちゃヒントが散りばめられていました。
熱意があればベテランダイバーは未熟さに目をつむってくれるし、先輩たちはかわいがってくれます。
きっと、そういう優しい先輩方は、見返りを求めてはきません。
ダイビング業界というところは、海が好きな人種が集まっているので根っこの部分が優しい人たちばかりです。
冗談交じりに「年取って潜れなくなったら面倒見てね」なんていってくるかもしれませんが、先輩たちから受けた恩はさらに若い世代のインストラクターたちに手を差し伸べてあげることでつないでいきましょう。
がんばろう!
実は冒頭の質問について、以前のnoteで似たような内容に触れたような…と思ってさかのぼってみたんです。
(この記事読んでねと言えたら楽だったので)
しかし、下書きだけで20記事もあってどこにあるのか分からず。
なので今回、改めて一つのテーマとして取り上げてみました。
そもそも何故そんなに未公開の記事が溜まっているのかというと、不特定多数の人が読んでいると思うと公開するのを躊躇しちゃうんですよね。
以前からお客様より「ショータのスキルはむやみに公開してはいけない」と言われてきましたし、noteを書き始めた頃も「あの記事が無料なのはもったいない」と忠告されたりもしました。
何カ月も記事を更新していなかった理由の一つは、このまま無料で公開し続けてもいいのかという葛藤があったからです。
そこで至った結論、次回からは少額ですが有料化していくことにしました。
正直、いままでは無料だったのでやってもやらなくてもどっちでもいいやという感じだったのですが、有料でも読んでくださる方がいるならば、その方々に向けて記事を書いていきます!
というわけで今回が最後の無料記事です。
今後有料になっても読みたいと思ってもらえるように、あるいはこれで石野の記事を読んでくれるのは最後かもしれないので、少しでも記憶に残るように全力で書きました。
若者の勇気になれば!
そして、もし読んでくださったゲストダイバーさんがいたら、
新米インストラクターを一緒に育ててください!
ではでは。
2024年の大晦日に恩納村より、石野でした。
よいお年をお迎えください。