猫とバイソン
猫とバイソンが、嵐の日に樹の下で出会った
バイソンは、西の方にある、群れの仲間が誰も見たことのない、「海」というものを目指していた
猫は、それまできままに散歩をしていた
バイソンは、なぜか猫と一緒に歩きたくなった
猫は、バイソンと歩くことにした
嵐が止み、二人は樹の下から出た
バイソンは、自分に合わせて早歩きになる猫を、背中にのせた
猫は、バイソンのフサフサの毛が生えた背中を少しくすぐったそうにして、ただ風を感じていた
バイソンは、猫が群れから変わり者と呼ばれた自分と一緒にいるのが、不思議だったが、嬉しかった
猫は、ただ遠くをみて、気持ちよさそうにあくびをしていた
バイソンは、「海」というものに、猫と行こうと思った
猫は、水が苦手で、海の匂いに毛を逆立てた
バイソンは、猫がお腹が空いているのだと思い、早く何か食べさせようと、海へと急いだ
猫は、走ってゆれる背中から跳ね上がり、バイソンの角が刺さって、折れた
バイソンは、海にいくことに夢中で、気がつかなかった
猫は、何度も角が身体に刺さって、痛くて鳴いた
バイソンは、猫が海を楽しみにして、喜んでいると思った
海についた
猫は、角がささったまま、バイソンの背中から、どさり、と降りた
バイソンは、角を見て、猫がバイソンになったと思った
猫は、もういちど、鳴いた
バイソンは、自分の角が一本、折れていることに気づいた
雨がやんだ
猫は、少しだけ離れた場所で、まだバイソンのとなりにいた
バイソンは、少し遠くから、はじめて、猫の大きな傷を、見た
猫は、疲れて、寒そうにしていた
バイソンは、自分の折れた角の痛み、猫に刺さった角の傷みを感じた
猫は、まだぐったりとしていた
バイソンは、猫の背中に乗っていたのは、自分だと気づいた
風が、吹き始めた