『シングルスのはちみつ』
俺の朝食はひと匙の蜂蜜から始まる。
パン、ヨーグルト、うめぼし、白米。どれでも構わない。俺は冷蔵庫にある朝食には、必ず蜂蜜をひと匙垂らした。何故こんなことを始めたか?話はガキの頃にさかのぼる。
家の近くに蜂の巣ができた。幼い頃の俺は好奇心にかられ蜂の巣をつついた。当然ではあるが蜂は怒って俺を指してきた。ちなみにその蜂はオオスズメバチだったらしい。刺された俺は言わずもがな、アナフィラキシーショックで倒れる。意識が遠のいていく。
……はちみつ
薄れゆく脳内で、とろけるように甘いフルーティーなそれに支配されていくのであった。
目を閉じれば億千のはちみつ…一番光るWinnie the Pooh…
次に目が覚めた時には病室の天井だった。同じ病室で吉川晃司がテニスの試合中継を見ていた。入院理由はよくわからないが、どうやら俺は下半身の全てが蜂蜜に侵食されたらしい。足、膝、骨、俺の矮小なおちんぽさえも、黄金色のべっこう飴と化している。
「坊主。酷くやられたな。」
隣のベッドにいた吉川庄司が話しかけてきた。
彼の前歯は、オオスズメバチの幼虫で出来ていた。そのため俺は話すことが難しく話そうと思ってもムニュムニュとした音しか出なかった。吉川庄司はムニュムニュになった俺を見て
「…wいやwwこれwからもw頑張れよww」
俺は、吉川晃司のなり損ないが……!と罵りたかった。
悔しい気持ちでいっぱいの脳内で、吉川晃司のベストアルバム『SINGLES+』の曲が順番に流れていくだけだった。
ビーマイベイベービーマイベイベー…
あっコレ布袋寅泰じゃね?てか、布袋のギターの絵柄ってQRコードにしたら盛れるくね?ウケんべ!
脳内のJKと会話しながら、俺はひとさじのはちみつを舐めた。
作者 ばちんこ/少年/人外/ぱりぱり
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