『武士の万年筆』
時は天保。江戸の街には様々な改革がなされ、人々の暮らしにも変化が生まれた。長い歴史の中で武士は刀を持たなくなり、次第に万年筆を腰に携えるようになったことは言うまでもない。ジョン万次郎もその一人である。
「ま、万次郎殿!ジョン万次郎殿!」
ドタバタと音を立てて、男が万次郎の部屋に飛び込む。
「なんだ?今万年筆を研ぐのに忙しいのに…」
「お、表にひろゆきが!
ひろゆきが攻めてきたんでさぁ!」
「現代ボールペンっていうものがあるのに万年筆を研ぐ人はアホですね」
そう、ひろゆきはジョン万次郎に対して宣戦布告をしにやってきたのだ。それを聞くとジョン万次郎もピキリと青筋を立てた。それに気付き、ひろゆきは更に万次郎を追い立てるのである。
「万年筆って、不要なプライドの現れですよね」
万次郎はただ聞くことしかできない、その時の万次郎に反論する力は無かった。
「なんだろう、黙り込むのやめてもらっていいですか?」
ひろゆきの追撃に万次郎は為す術もなく、膝から崩れ落ち、そのまま膝で地面を掘った。
「拙者は…この万次郎の名を…今日を持って捨てるで候…っ!」
地面から、じわりと地下水が滲んで来る。
僅かに生まれた水たまりには。
負けるな万次郎。お前の腰にある万年筆はなんだ?
万次郎は立ち上がり、懐の万年筆をひろゆきの頸動脈にふかぶかと突き刺した。(ONEOKROCKの完全感覚Dreamerが流れる)
頸動脈からは沢山の血が出てくる。ひろゆきは
「あーなるほど、万年筆にはこういう使い方もあったんですね」
と言い残し、死んだ。
万次郎は刺さったままの万年筆を手に取りはしなかった。
ラストサムライはひろゆきの死とともに全てを終わらせることを選んだのだった。
武士が消えても万年筆は消えない、彼の亡骸が土に還った後も。
作者 ばちんこ/少年/人外/ぱりぱり
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