チーム分析のフレームワークを使ってのチーム分析(磐田編)
久しぶりに分析記事をあげるよー。
記事をあげるモチベーションを与えてくれたのは「モダンサッカーの教科書」という本。
この本の内容についてここでは詳しく触れないが、とにかくモチベーションを与えてくれたのだ。
今回は試合の分析というよりも、磐田というチームがピッチ上ではどういうチームなのかという部分にフォーカスしております。
対象試合は湘南戦。
本当は2、3試合は観返したかったけど、湘南戦しかDAZNに残っていなかった。
一ヶ月も前の試合なので、先に結果を書いてしまうけど、負けた試合です。
負けた試合を観返すのは辛いけど、DAZNにあるのが湘南戦しかないのだから仕方ない。
強い気持ちで観返すしかない!!
磐田と対戦するクラブのサポが試合前に読んで参考になったり、磐田のことをよく知らない人が読んでなんとなくでもどういうチームなのかをイメージできるよう心掛けて書きました。
スタメンはご覧の通り。
チーム分析のフレームワークで磐田を観る
攻撃(ビルドアップ)
磐田のビルドアップは、ほとんどがダイレクトなビルドアップである。
ポゼッションによるビルドアップが可能な状況でも、前に蹴ることが多い。
祥平がカミックに下げて、逆サイドの新里に展開することも可能だよ~という状況。
ミヤが後方でパスコースを確保してくれている新里に渡して、カミックを使って、ポゼッションによるビルドアップが可能な状況だけど前に大きく蹴りだす。
ここで言いたいのは、今回取り上げた二つのプレー良い悪いとかでなく、磐田は縦に速く攻撃する意識が強いということである。
個人的にはポゼッションによるビルドアップもできた方がいいと思うが、チームに落とし込まれていないはずなので仕方ない。
このダイレクトなビルドアップによって、一気にアタッキングサードに侵入するのが磐田の主なビルドアップなのだ。
攻撃(ポジショナルな攻撃)
では、アタッキングサードにボールを運んでから、どう攻略するかとなるのだが、磐田にはこれといったパターンがない。
これはJ2時代に名波体制になってからの永遠の課題なのだが、再現性のある攻撃パターンがないのである。
J2(2年目)~J1(1年目)はジェイという絶対的なボックスストライカーがいた。
雑なボールであろうと、ジェイにボールを渡せば、ゴールにしてくれるスペシャルなプレイヤーだ。
相手をどう動かして、味方をどう動かすなど細かい設計はない。
とにかくゴール近くで待ち構えるジェイに渡す。
それがパターンといえばパターンなのだが、ジェイ個人の力に大きく依存するため、ジェイのコンディションに結果が大きく左右されるためチームとして健全な状況かというと疑問なところはあった。
不在時には”ジェイ”というゴールパターンがなくなってしまうため、穴埋めができないという問題が起きる。
J1(2年目)に、ジェイ一人に頼らないチームにするために(理由はそれだけでないが)、ジェイとの契約が満了となり、川又が加入することになる。
ジェイに比べると、高さと得点能力では劣るが、スピードと機動力に優れており、FWによるファーストディフェンスが期待できる補強だった(ジェイはディフェンスをほとんどしなかったので)。
加入当初は、ジェイとほとんど同じような使われ方をして、ジェイが抜けたマイナスな面が目立っただが、徐々に使い方をチームとして整理できてきたのと、本人個人のレベルアップもあり、磐田のエースへとなりました。
そんなエースの川又なのだが、サイドのスペースやハーフスペースに流れてボールを受けることが多い。
そこでダイレクトなビルドアップの出口となる役割になるわけだが、必然的にゴール前から遠ざかってしまうことになる。
他にスコアラーがいるのなら川又がゴール前から遠ざかっても問題ないのだが、アダが長期離脱してしまった今、川又と同レベルのスコアラーはいない。
ゴール前から遠ざかったところでビルドアップの出口になったり、ポストプレーをすることが磐田にとっていいことなのかは、正直疑問に思っている。
アタッキングサードの攻略は個人やグループによる即興性が強い磐田なので、ボックス内で人が足りないことが少なくない。
その状況で崩す術があるのならいいのだが、それも特にない。
昨シーズンはセットプレーによるゴールが多かったが、今年はそれほど多くない。
主要なゴールパターンでゴールがとれていなく(セットプレー)、それ以外にこれといった攻撃パターンもないため、ゴール不足に苦しむのは当然といえば当然の結果なのだ。
ネガティブトランジション
磐田はほとんどがリトリートをして、待ち構えることが多い(1-5-4-1、1-5-2-2-1)。
J1(1年目)までは、ゲーゲンプレッシング寄り(Jリーグで観られる気持ち守備)だったのだが、質がかなり低く、ゲーゲンプレッシングのデメリットばかり目立つ状態だった。
残念ながら、磐田の現場スタッフにゲーゲンプレッシングを仕込めるスタッフはいなく、J1(2年目)からリトリートをしてブロックで待ち構えるディフェンスをメインにしたのであった(スパッと諦めた名波さんの判断はグッジョブだった)。
守備(プレッシング)
磐田のプレッシングは守備的プレッシングであることが多い。
たまに攻撃的プレッシングもあるが、そこまで多くない。
超攻撃的プレッシングは、ほぼない。
守備(組織的守備)
磐田の組織的守備はゾーンの中でのマンマークである。
かなり人に強くいくディフェンスだが、完全なマンマークというほどではない。
ただ、ゾーンディフェンスができるけど、人へ強いディフェンスを選択しているというよりも、完全なゾーンディフェンスを仕込めないので、ゾーンの中でのマンマークという消極的選択になったと私は考えている。
昨シーズンは失点が大幅に減りましたが、ゾーンディフェンスというよりも、人海戦術に近く、1-5-4-1でいかに自陣ゴール前のスペースを消して跳ね返すかというものでした(仮に破られても最後にはカミックがいる)。
ただ、人海戦術でただ受け身になるというのを名波さんはよしとしないので、人海で守りながらも積極的にボールホルダーの近くの選手にアタックさせます。
それは全然いいのですが、アタックしにいった選手に応じて、陣形を動かさないこともあり(例:最終ラインのWBがサイドに張ってボールを受けた選手にアプローチにいったのに、最終ラインの他の選手がスライドしないためにWBが出たスペースが空いてしまう)、ボールや味方選手の位置に応じてポジショニングを細かく動かすという意識は高くありません。
大井、祥平、新里、カミックとゴール前にはそこそこ質の高い選手が揃っているので、なんとなく誤魔化せてしまうことも少なくないのですが、こういう部分が世界との差でもあります。
ポジティブトランジション(ショートトランジション)
モダンサッカーの教科書にも書かれていますが、ショートトランジションの場合だとアタッカーの特徴に左右されるものがあります。
アダがいれば、彼のスピードを生かすのが一番なのですが、現在長期離脱中。
川又はスピードはあるけど、ドリブルスピードがあるタイプではないので、個人で独走できるかというとなかなか難しかったりする。
今だと川又、松浦、大記、リッキー、泰士、康裕あたりの3人くらいの複数の関係でフィニッシュにいくのが多いかと思います。
ポジティブトランジション(ミドル/ロングトランジション)
攻撃のパートでダイレクトなビルドアップが多いということを書いているので、予想できる人も多いかと思いますが、ミドル/ロングトランジション後のプレーの傾向としては縦志向が強いです。
一番多いのは外に流れた川又に対してロングパスをすること。
そのボールに対して起きるパターンとしては、川又がキープする、ヘディングをしたセカンドボールを近くにいるシャドーが回収する、最終ラインの裏にフリックして一気にゴールを狙うの3つ。
3つ目のパターンはアダがいるときに起きていたことなので、現状は2つのパターンとなる。
ただ、明らかに川又に目掛けて蹴ることがパターン化されているのに、シャドーより後ろの選手の押し上げが遅く、川又とシャドーの2人しかボール周辺にいないことが多い。
仮に松浦が回収したとしても、川又は競り合いをした後に確実に次のプレーにすぐに移行できるほど圧倒的なフィジカルではないので(強いは強いですが)、松浦の近くにいるのが大記だけという状況になってしまいます。
他の選手がもっと前に押し上げて、回収後の攻撃パターンを作り上げないと、川又が無駄に疲労してしまうだけなので、非常にもったいないと思っています。
雑感
初めて、チーム分析のフレームワークを参考に磐田を観たが、ぼんやりとしたものをクリアすることができた。
ずっと追っているクラブなので、目新しい発見があったとかはないけど、頭の中でわかっていたころをしっかりと棚卸しした感じ。
本来であれば数試合観て、対戦相手も違うのを観て書きたかったが、最初に書いた通り湘南戦しかなかったのが、湘南戦だけでこの記事を書いた理由の1つ。
そして、もう1つ理由がある。
磐田は、対戦相手のスタイルに応じて、大きく戦い方を変えるようなことがそれほどない。
少々の変化はあれど、今回書いたようなことをやるチームだと思ってもらっていいと思います。
スタイルを変えずとも結果を残せるとポジティブにも考えられるけど、1つのスタイルのぶつかり合いが多いのがJリーグでは多いのではないかとも思う(だから試合中に柔軟に変化をするスキルが身につかないのだろう)。
この試合だけじゃ磐田というチームを語れないよ!!というのが本来は理想なんだけど、そうではないという現実。
Twitterにはよく書くけど、名波体制でいくのなら(というかいくはずだけど)やはり現場スタッフの変化がないと、これ以上上にいくのはなかなか厳しい。
特にマリノスや神戸あたりが和式サッカーから抜け出そうとしており(努力しており)、それがうまくいくと、本当に追いつけなくなると思う。
現場を続けながら多くをインプットをするのはかなり難しいので、現状のスタッフ体制だと、選手個人の成長や即戦力を獲得する方法でしか強化するのが難しいでのはないかと思う。
しかし、磐田は資金が豊富にあるわけではないので、この強化法はかなり厳しい。
服部さんが選手補強においては、(Jリーグからすると)かなりマニアックな国の選手を見つけてくるので、それを現場スタッフの人材に生かせないものかと強く思っています。
おまけ
以上で今回の記事は終わりです。
チーム分析のフレームワークを使っての分析は初めてだったので、分析精度はまだまだですが、引き続きやっていこうかなとは思っています。
もし、この記事を読んで「うちのクラブもやってみようかな」と思ってくれたサポの方がいましたら、ぜひ書いてくれたら嬉しいです!!(もし書いたら教えてほしい。宣伝もします!!)。
たくさん集まれば、試合を観るうえで大きな助けにもなるし、議論を起こせるきっかけにもなるのではないかと思います。
それでは。