セレッソvsセビージャ

全然レビュー書く予定でなかった試合なのだが、セビージャがあまりに強く、かつチームとしての質が高かったので、急遽書くことに。

セビージャは、サッカー好きの中では知られているが、レアルやバルサのように絶大な人気と知名度のあるクラブではない。

そのためか、浦和vsドルトムントに比べると、スタジアムの空席が目立った。

メッシやクリロナのようにスーパースターがいるわけでもないので、セレッソサポとセビージャサポ、そしてコアなサッカー好きが集まったのだろう。

セレッソは現在J1首位にいるチーム。

セレッソの試合を観た人ならわかると思うが、運良く首位にいるわけでもなく、しっかりと実力のあるチームである。

そんなセレッソがセビージャとどれほどの差があるのか。

そこに注目しながら観たい。

スタメンはご覧の通り。



ボールを奪うということへの意識の差

ドルトムントを観ても思ったのだが、海外クラブはボールを奪うことへの意識がJリーグに比べると明らかに高い。

Jリーグのようにチームや個人の力関係を無視して、ディレイや撤退を率先して行うということはない。

どう奪うかの個人、チーム戦術のレベル差はもちろんあるけど「相手がボール持ってるのだから、奪う。普通のことでしょ?」という考えが基本的な部分にあるのだと思う。

セレッソの守備は受動的なことが多く、かつ受動的にどう守ろうというよりも、とりあえず撤退してブロックをつくるという守備であった。

そのため、セビージャがミスすることに依存しなければいけない部分があった(セレッソがコントロールできない部分)。

しかし、セビージャの選手はミスが少なく、一方的に攻め込まれる時間が長くなってしまった。

今回ピックアップしたどのシチュエーションもそうなのだ、セレッソの選手はボールホルダーとの距離が遠い。

奪いにいっても外されるからという判断で、引いてブロックを作るような守備をしたのかもしれないが、今回のセレッソは人数がいるだけで強固と言えるような守備ではなかった。

また、今回のセビージャのように技術レベルが高い選手にプレッシャーがかからないと、好き放題に精度の高いパスを出されるのは目に見えている。

Jリーグでいえば、俊輔や遠藤を常にフリーでボールをもたせたらどうなるかを想像すればわかりやすい。

今シーズンのセレッソは、J1では守備が堅い部類に入るチームだと思うが、それはあくまでJリーグ内での話という現実をこの試合で突きつけられた。

もう少し能動的に奪いに行く守備で挑んでいたら、どうなっていたかを観たかったし、チャレンジしたほしかったなと思った。

一方セビージャは、能動的にボールを奪っていた。

追い込みながらも、ボールにアタックすることでボール奪取に成功したシーン。

手前の2人はマークがついているためパスは厳しい。

前方左の選手にパスは通せなくはなさそうだが、蛍のパス技術とエンゾンジのポジショニングを考慮すると、カットされる可能性が高そうである。

このシチュエーションでカットされると、一気にショートカウンターを受けるシチュエーションのため、それは避けたい。

となると、パスコースは直線上にいる選手になる。

パスが渡ったたら、エンゾンジがボールホルダーにアプローチする。

中央へのパスコース(赤線)を消しながらアプローチしているため、パスコースが外に限定される。

サイドの選手にボールが渡ったら、すぐにアプローチにいく。

横or縦(どちらも緑線)へのパスorドリブルに限定される。

アプローチがかなり速かったため、苦し紛れに横にパスをするのが精一杯で、ミスを誘うことに成功したセビージャ。

ミスを待つのでなく、ミスを誘う。

これは大きな違いである。

このシチュエーションでは、セレッソの選手がどこで奪いたいのかが全く共有されていない。

ファーストディフェンダーとなるのは杉本健勇(白丸)。

健勇は、エンゾンジのパスコースを防ぎにいく。

木本はサイドの選手を捕まえにいく。

そして、結果どうなったかというと、、、

木本がサイドに動く前の後方にいた中央の選手にフリーの状態でパスを通させてしまっている。

フリーなので、容易に前を向けてしまう状況である。

ややサイドに寄っているが、中央へのパスは誘い込んだパスでもない限り、できるだけ通させたくない。

しかし、通させてしまった。

なぜなのか?

ファーストディフェンダーの動きで、後ろの動きも決まってくるため、今回の杉本の動きを前提として考えると、推測できる理由としては2つ。

1、木本の判断ミス

木本が周りの状況を考えずに勝手にサイドに動いてしまった。

2、木本の後方の選手が意図に気づいていない

実は健勇がエンゾンジのパスコースを防ぎに行く際に首を振っている。

その直後に木本がサイドに動いている。

なので、もしかしたら、木本は健勇の指示なり意図を読んでサイドに動いた可能性もある。

そして、後方の選手は、味方が見てくれるだろうと木本は判断した可能性がある。

そして、そこでボールカットを狙おうという意図があったのかもしれない。

しかし、結果はフリーでパスを通させてしまった。

ここで問題なのが、これが単に木本の後方にいた味方がいかないといけないシチュエーションとわかっていながらもポジショニング変えられなかったのか、それとも単にわかっていなかったのかということである。

前者なら「なぜいかなかったんだ!!」とピッチの選手や監督、コーチが言えば解決することである。

しかし、後者ならそうはいかない。

理由は単純、知らないから。

今回のシチュエーションだと、縦へのパスコースのみに限定しているのだから、中盤の選手は押し上げて、できるならカット、せめてアプローチをしてプレッシャーをかけるぐらいはしなければいけなかった。

アプローチしなければいけないとまで言い切ったのは、さらに後方の状況が関係している。

最終ラインは、2人のうちどちらかが前に出ても全く問題ない状況であったのだ。

右サイドの2人は、いつでも潰せる距離で見えているし、左サイドに展開されても、LSBが素早くスライドすれば問題ない。

なので、余って中央にいる意味がほとんどないのである。

個人の状況判断力がまだまだ低いのだなと感じせられるシチュエーションだった(片方は日本代表なんだけどね、、、)

チーム力の関係によっては、ディレイや撤退が多くなることがあるのは理解しているし、それを選択する方がいい状況ももちろんある。

しかし、もっと能動的にボールを奪えるチームがJリーグ内で増えて欲しいし、逆に人海戦術でない撤退守備が強みのチームがあってもいいだろう。

守備のカラーが多種多様にあるリーグになっていけば、選手の力もつくし、Jリーグも面白くなるのではないかと思う。



代表監督はなぜ海外組を優先するのか?

度々聞こえる意見がある。

「なぜJリーグでパフォーマンスのいい◯◯を招集せずに、海外組の◯◯を招集するんだ!」

という意見だ。

しかし、この試合でわかったと思うが、Jリーグと海外リーグでは単純な比較をするのは難しいということである。

例えばJリーグで15得点しているFWとブンデスやリーガで5得点しているFWがいたとしたら、現状のリーグのレベル差だと後者を招集しようと考える監督が多いのではないだろうか。

なぜかというと守備のレベルが違うからである。

Jリーグだとシュートできるようなシチュエーションなのに、海外だとブロックされてしまう。

海外選手との対戦経験が少ない日本人選手が海外選手と対戦したときに「スピードが違う。普段なら出てこないとこから足が出てくる。」といった感想をよく言う。

つまり日頃のスタンダードレベルが違うため、Jリーグで活躍しているけど、欧州や南米のスタンダードレベルと対峙したときに同等のパフォーマンスができるのか?という疑問や不安が監督にはあるのである。

もちろん同等のパフォーマンスを発揮する可能性はあるが、A代表は結果最優先なので、日頃から欧州のスタンダードレベル以上で戦っている海外組を重宝するのは極めて自然なことなのである。

Jリーグが欧州のスタンダードレベルまで上がれば一番いいのだが、それは長期的な時間を必要とするので、現状は選手が海外に移籍することが、日本サッカーを強くする一番の近道となっている。

蛍がベンエデルにファールすらさせてもらえずにぶっちぎられたシーン。

蛍は2回ファール覚悟のアタックをしているが、ベンエデルはどちらも耐え、かつボールもしっかりとキープしている。

Jリーグの選手がただ止められなかったのではない。

現日本代表で、かつ守備が武器の選手がファールすらさせてもらえなかったのである。

モントーヤへの柿谷のチャージはファールだと思ってもおかしくなく、モントーヤがファールアピールをしても不思議でないのだが、モントーヤはそんなことを一瞬たりともよぎっていなかったのだろう。

それくらい倒れてから、立ち上がるまでのスピードが速かった。

日本人選手で、ペナ内で倒されても、アピールもせずに立ち上がってすぐにプレーに移る選手がどれくらいいるだろうか?

どちらもJリーグではなかなか経験できることではなく、トップがどのようなレベルで競っているのか痛感させられた。

Jリーグは、もっとタフなリーグに進化していかないと、海外に移籍しないと世界に追いつけないという状況は変わらないだろう。



雑感

川崎vsドルトムントのイメージがあったため、浦和vsドルトムントの期待値が高かった。

その分、試合内容が微妙だったときの落胆の落差も大きかった。

そんなことがあったため、セビージャへの期待値もグッと下がっていた。

ところがどっこい、質の高いサッカーで現在Jリーグの首位にいるセレッソを圧倒したのである。

個の質だけでなく、チームとしての差も見せつけられ「世界のトップやばい」と感じたサッカーファンは少なくないだろう。

世界の試合を簡単に観れるようになったとはいえ、それは海外クラブ同士の試合で、今回のように私たちの身近にあるJリーグクラブとの試合に比べると、感じることは全然違う。

お客さんをある程度呼ばないといけないから、それなりに知名度があるクラブしか呼べないのだろうけど、できることなら、もっと多くのクラブを呼んで多くのJリーグクラブに世界との差を感じさせてあげてほしいなと思った。

それくらいの衝撃があったし、日本にいながらこんな試合ができたセレッソが羨ましいと思った。

土曜に鹿島との試合もあるし、若干チケットもあるようなので、行ける人は生観戦する価値のある試合だと思います(ちなみに私観戦予定です)。

現地でしか気づけないようなことがあったら、報告したいと思っています。

期待せずにお待ちください!!

ではでは。

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