【#ガーデン・ドール】安心と温もり(前編)
雪が降り始めたガーデンでの出来事
長すぎたので前後に分けております。
…後半はもうちょっと甘めになりますよ。
眠気を誘う物は?と聞かれると、元気よくホットミルク!と答えるくらいには良く飲んでいるそれ。
お手軽で簡単に暖まり、程よい眠気を与えてくれるその存在はよく寝不足になるリラにとって欠かせない物である。
異常気象により、一変して冬エリアのようになってしまったガーデンは、いつもは深夜でもほんのりと暖かい廊下まで、寒くしてしまっている。
早く元に戻さないと、各所から不満しか漏れてこないこの気温に震えながら、とんとんとリズム良く目的地へ足を動かす。
先ほどまでいた廊下から変わり、暖かいその部屋に滑りこむようにして入り、温度が逃げてしまわないように素早く扉を閉める。
急いだせいか、今朝打ったおしりが痛みを主張してきて顔が引き攣った。
「あいたたた…まだおしり痛い………」
「おやリラさんこんばんは」
「……あれ、リラくんどうしたの?」
ガーデンの異常気象について話していたであろうククツミさんとヒマノさんに痛みの原因を伝えて、労いの言葉をもらいつつ、余っているというコーンポタージュをヒマノさんに温めて貰う。
誰かに準備してもらうことも悪くない、と思いながらふたりの談笑に加わる。
入れてもらったポタージュを受け取って感謝を伝え、その熱さに苦戦しつつ口へ運んだ。
「…浮遊魔法で滑るのはどうでしょう。…」
「…倒れないように滑ってく感覚が楽しい、なのかな…」
ただ寒いだけで妨げにしかならないこの雪をどうにかして有効活用できないか、と考えている二人の会話を聞きつつ、そういえば季節の石があべこべになってしまった通知が着ていたな…と、内容を思い出しながらごくり、ごくりと飲み進めていく。
途中火傷をしそうになりながらも、熱いそれは私の内側をじんわりと温めてくれた。
ちょうど、手元の皿からポタージュが消え、座っているせいで痛むおしりに内心どうしようかと悩んでいた時。
「さっむ……」
寒さのせいかいつもより体を丸めて現れた相手を見て、持っていた皿を強く流しに置いてしまう。
思わず割れていないか確認して、大丈夫なことに一安心。
遅れて、寒さのせいかすこし機嫌の悪いリブルさんもやってきて、ふたりにポタージュがあることを伝えると、飲む、とのことなので、お皿を洗い終えてポタージュを温め始める。
「ありがとな、リラ」
といつもより優しさの感じる笑顔を向けられて、よく分からない表情が出てきそうになり、あわてて笑顔を貼り付ける。
…考えれば考えるほど、この気持ちが何なのかわからず、ふたりにポタージュを渡した後、ククツミさんのほっぺを堪能させてもらって気を紛らわせることにした。
ほっぺをつつかれている当人は寝ぼけ眼でゆっくりぱちぱちと瞬きしつつ
「……増えてたしヒマノくんいなくなってた……」
「ヒマノさんはさすがに今日は外に出ずに寝る、って戻りましたよ~」
と伝えると、鳴き声…を漏らしながらもされるがまま。
もっと堪能しようと横に座り、また思い出したようにおしりが痛む。
それを見逃さないリブルさんにへらり、と笑顔を返しつつ、ヤクノジさんからも心配の声が届く…怪我もしてみるもんだな、とちょっと思ったのは内緒。
「……だめだ、寝る……」
と危ない足取りのククツミさんを出入口まで送って、ソファに座るとなにやら風紀委員で雪かきを実施する話になっていた。
怪我人を出さないように、誰かを思って出来ることをしようとするふたりの会話を聞きつつ
「そのけが人なんだから、リラは痛みが引くまで無理すんな。雪かきはやっとくからさ。」
その何気ない気遣いの一言に、私は胸にすこしの違和感を覚える。
「?」
軽く胸に手を当てつつ、なんだったんだろうと考えるも何もわからない。
首を傾げつつ、体がまた冷えてきた感覚に、もう一度温かいものを飲んで、今度こそ部屋に戻って寝ようと決めてキッチンへ向かった。
ホットミルクを温めている途中、アイラさんもやってきて、四人になって賑やかになったLDKを見て笑みがこぼれる。
途中、ココアを飲みたいヤクノジさん用に小鍋にミルクを移すと、並んで一緒に鍋を混ぜ始める。
そんな姿にまた胸に違和感を感じる。
いろいろと話は弾み、窓を開けたら顔面に雪玉が当たった、と聞いた時はびっくりしたが怪我はなく、むしろその後アイラさんに振り回されているリブルさんが珍しく動揺していて、思わず笑ってしまった。
「楽しそうだな。……痛み、和らいだか?」
その一言を伝えられるまで気付かなかったが、痛みが引いていることに少し驚く。
…もしかしたら、私はちょっと…いや、だいぶ、"ちょろい"のかもしれない。
単純すぎる自分に少し面白くなりつつ、完成したホットミルクを配って自分も飲む。やっぱりおいしい。
このメンバーなら、楽しく遊びながら季節の石を探せるのでは、と思った私は三人にある提案をしてみる。
これについては、アイラさんが他に誘いたい子もいるとのことで、一旦保留に。
後日、しっかり雪で遊びながら、石をひとつ見つけたのはもう少しあとになってから。
(後半へ続く)
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【主催/企画運営】
トロメニカ・ブルブロさん
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