チョコミントアイスクリーム・シンドローム
冷蔵庫に保存していた、チョコミントパフェアイスを食べた。
いつ買ったのかは定かではないが、去年の秋よりも前なのは間違いない。
私には「ストック癖」ともいう癖があり、とくに季節限定のアイスなどは一度気にいると季節中そればかりを買いだめして、常に冷凍庫に3個以上入っている状態にしてしまう。
チョコミントアイスは、その典型例だ。
その中でも明治から発売されている「チョコミントパフェアイス」は私の心を捉えて離さないアイスで、去年の夏は延々とそればかり食べていた。
ちなみにその前の年は森永の10本入りラムネバーを延々と買い続けていた。
さて、チョコミントアイスが店頭に並ぶ季節が過ぎ、売れ残ったチョコミントアイスがディスカウントされる頃、私は「頃合いだな」と思い、見かけるたびに3個ずつは買っていた。
家の冷凍庫には、チョコミントパフェアイスばかり5つも6つも入っていたと思う。
冷凍庫を占領していることを家族に咎められるが、私は意に介さずそのチョコミントパフェアイスを大事に大事に食べていた。
気がつくと、安心できるほど買い込んでいたはずのチョコミントパフェアイスはたった一個になっていて、長らく冷凍庫という名のベンチにいたソイツは、カップの中で少し縮んで、上には小さくて四角い氷の粒がびっしりと張っていた。
どうやらその時が来たようだ。
私は、「ストックの中から食べるものを選ぶ時、古いものから選んで消費すること」を「棚卸し」と呼んでいる。
私はアイスだけではなくスナック菓子、ドリンク、果てはマンガや小説に至るまでを溜め込んでしまう癖があるから、時間という基準を設けないと消費できないのだ。だから賞味期限のないマンガや小説はいつまで経っても読めずにいる。
厳密にいえばアイスも賞味期限はないのだが、美味しく食べられるという期限は暗黙の了解であるようで、あまりにも古いアイスはしわしわのパサパサになってしまう。
アイス側からすると本来の力の100%を出せないというのは悔しいだろうから、「アイスが実力を出せるギリギリの期限」と、「私が食べたい絶妙なタイミング」の一致を狙うのが、ストック癖の人間のワザである。
というわけで、長らくベンチでウォームをしていたチョコミントパフェアイスに、いよいよ登板の機会が与えられたというわけだ。
NHKでやっていた矢沢永吉のドキュメンタリー(一回見たやつの再放送)を見ながら、暖かい緑茶と共に消えていくチョコミントパフェアイス。
……あれだけ惜しいと思っていたのが嘘のように、食べ終わった後に何の感慨も湧かなかった。
「あ、私、チョコミントパフェアイス、食べ過ぎたんだな」
思い返せば、チョコミントパフェアイスを大量に食べていたせいで、食べる前から味の再現が舌の上で完璧に行われており、いつしか「チョコミントパフェアイスを食べる」というよりかは、「記憶の味を再確認する」という作業にすり替わっていたのだ。
どうやら、私の「記憶の中のストック」は実はいっぱいいっぱいだったようで、食べ終わった後の感想は「まあ、今年の夏にあったらまた買おうかな」くらいの軽い物であった。
そして夏が来ればきっと、また季節限定アイスを買い、「無くなったときのために買い込もうかな」と思い、冷凍庫に無限に増やしていくのだろう。
いつ行ってもお店にある、一軍アイスの偉大さを噛み締めながら。
……ベンチにはまだ、ポリ袋に入った「チョコミントのパナップ」があと4つ控えています。これも夏頃は毎週のように食べてました。
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