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Spoon
アイスの詰め合わせを開けた。
脳の一部が眠っている感じがあって、どうにかしなければならないと思い、私はそれに手をつけたのだった。
「ハァン、組み立てうまくいかないよ」
部屋の隅っこで、深久茂(みくも)が小さく叫ぶ。
「何、アンタそんなことも出来ないの」
「複雑になり過ぎた機能を世界は持て余すのさ」
「御託はいいから説明書どうした?」
「すぐにぼくの手から溢れ落ちた。それは必然とも言えた」
頭部を失い続けた扇風機がぽつねんと存在している。
半年前に左耳のピアスを失くしてからというもの、深久茂はこの調子である。ひょっとするとあのピアスは、深久茂にとって言葉の濁流を止める必需品だったのではないかと思う。
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