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稲妻ピンクに恋したい

突然の告白は、ミサイルぶっ放してんのと一緒らしい。AM1179で言っていた。

幼少期は一部がテントの家(どういうこと?)に住んでいて、つまりドアも鍵もなくて、
色々な人が出入りしていた。
就寝タイムに布団でゴロゴロしながら振り返ると、外にいる大柄な黒人と目が合った時はさすがにびっくりした。
駅で見た覚えがあって、家まで着いてきたらしかった。

恋が淡いものという感覚は、ない。
どきどきしたり、もじもじしたり、そういう経験はなくて、わたしはマグマのように熱くなったものの単なる受け皿だった。

声を犯罪に使われた子どもがいたけれど、わたしもまた同様だった。
留守録にヨガリ声(小4か小5だから上手くできるはずもない)を入れるように言われた。
他でもない両親に売春行為をさせられているとは、思わなかった。
頭のどこかでは感じていても、表現するにはあまりにも語彙が足りなかった。

両親は感情のままに動く人だった。
父はちょっとした有名クレーマーで、母は元いじめっ子だった。そういうことを恥ずかしげもなく、むしろ自慢げに話していた。
いつもどこか汗臭かった。

わたしはいつも両親を社会的に抹殺することばかり考えていた。
本当に殺したくなる夜も数えきれないほどあったけれど、それはわたし自身もまた殺されることを意味した。

初恋は中2だ。
総合格闘技をやっている男の子で、潰れた拳が特徴的だった。
隣の席になったのをきっかけに、ノートの端切に描いた四コマ漫画を見せてくれたりおすすめの音楽を教えてくれたり、いつもわたしに優しくしてくれた。

嘘。
そんな人は存在しなかった。
わたしが毎日遺書を書いていても、気に留める人などいなかった。
1人だけずっと、ニンゲンじゃない。
優しいパパ。微笑むママ。わたしの状況をすべて理解してくれる親友。ありったけの愛で接してくれる恋人。
わたしはもう随分と長い間、この世界の“どこにもいない人たち”を待っていた。

今もずっとそうだ。何も変わらない。
息のしやすい場所はなかなか見つからず、逆襲の機会も逃し続けている。

あー、ぜんぶ忘れて、恋がしたい。

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北村らすく
ハマショーの『MONEY』がすきです。