安いオンナ
CASE2
美鳥YO輔さん。age23。ゲーム会社
max:矢沢あいの漫画に出てきそう normal:どこぞの売れないミュージシャン low:シワシワの木
出来すぎた名前だと思った。「ミドリヨ⚫︎スケ」カッコ良すぎん? 漫画やん!
同い年だった。顎髭が似合う、華奢なチビ。しかしやたらに雰囲気があって、放っておけなかった。一目惚れだった。
転職活動が思い通りにいかず、仕方なしに始めたアルバイト先のゲーセンで出会った。月一の点検と、機械が壊れた際に修理に来るのが彼だった。正直、壊れているのかどうか分からない叩けば治りそうなレベルでも、私は社員に上手く言って彼を呼んだ(チョロい)。会いたかった。
「またお前か……」
事件現場にコナンあり。修理現場に、私あり。
どういう経緯か忘れたが、連絡先を聞き出し二人で飲みに行くところまで何とか漕ぎ着けた。酔っ払った後に立ち寄るゲームセンター(バイト先とは別)のクレーンゲームが上手くてまた惚れた。とにかく私は器用そうな人が好きなのだ。
しかしこの男、吐き気がするほどセコかった。クレーンゲームも無駄金を使わないために上手くなったのかもしれなかった。家の机はただのダンボール、それと牛乳パックで作った椅子。(おばあちゃんか?)
テレビも普通のではなく、ダンボールをくり抜いた窓のようなところに画面がはめこまれ、きちんとリモコンもあった。どうやって電気が通っているのか、電波を受信しているのか、検討もつかなかったが彼はとにかくこういった類のDIYに凝っていた。
デートはいつも夜から安い居酒屋で。
私が都合のいい女は嫌だとごねると、じゃあ昼間に会おうと言ってくれた。イオンで買い物デートね、と。正気か!?あんたは中学生?
美鳥YO輔よ、どこが美しい鳥じゃ!鳥のふん以下じゃ、おまはんは!喫茶店に行けば、紅茶についてくる薄切りのレモンをいつまでもしがんでいた。
今どきお目にかかれない古き良き時代の男、否、言動がことごとくダサく隣を連れて歩くのが恥ずかしい男だった。
初期段階で見抜けなかった私はド阿呆である。
行為については遅漏のためか、完全奉仕スタイルだった。前戯に1時間、ク⚫︎⚫︎にも相当な時間を費やしてくれた。ビッグラブを感じた。只毎回となると……女皆が皆焦らされるのが好きなわけではない。さくっといきたい日もあるんだぜ。
とはいえ、雰囲気抜群イケメンの彼だ。腕を回した時感じる背中の濡れや額からこちらに伝う汗は妖艶でゾクゾクした。歯軋りするように耐える顔も低く掠れた咳払いさえ美しかった。
彼の写真はまだ残してある。元彼の話になった時友達に見せる用だ。お金を使ってもらえなかった分、これくらいの働きはしてもらわにゃ割に合わん。
「バチくそかっこいいじゃん! 何で別れたの?」
待ってました、この言葉。優越感に浸れる時間。セコかったからなんて口が裂けても言わないもんね。
そういえば鞄を持たずにイオンの袋に財布やら携帯やら入れて持ち歩いてたな。イオンと私どっちが大事やったんやろ。
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