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家事・育児は分担しすぎない方がいい

「少なくとも育休の最初のうちはいろいろなことを分担せずに、同じことに夫婦ふたりで一緒に取り組むのが良い」

奥さんが第一子の出産を控えた方からアドバイスを求められたのでお昼を食べながら話をした。その中で、育児休暇中の家事や育児の分担についての話になってこんなことを伝えた。分担が家事や育児を大変にしているのではないかと思うことがある。こう考える背景をちょっとだけ深掘って考えてみようと思う。

記事の要約

- 子育てにおける敵は家事・育児におけるタスクの属人化
- 属人化の要因は夫婦間のスキル差と作業環境の個別最適化
-「自分も相手もこのタスクをやれる」という期待を夫婦間で維持することが重要
- 初期は分担をせずにふたりで一緒に同じタスクに取り組むべき

早く終わらせないとムダな作業が増える

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たまりにたまった洗濯物。たぶん洗濯機を一度回しただけでは終わらない。ああ、そんなタイミングで子どもがおしっこを漏らしてしまってシーツを洗わなければならなくなってしまった。家の洗濯機だけで洗っていたら夜までに乾きそうにないので車でコインランドリーにいかなくては。洗濯物をためておかずに先に洗っておけばこんなことにはならなかったのに。

仕事でもそうだけどタスクは放置しておくと別の仕事を生むことがよくある。1ヶ月寝かしておいたプロジェクトを再開するときには思い出したり周りに前提を確認するコストがかかる。この思い出す・リスタートという行為自体は何の価値も産まない。単に余計な仕事が増えている。もったいない。

タスクは放置せずに完了しないと次のタスクを呼び起こす。洗濯物を早く洗っておけばコインランドリーにいく手間はかからなかったのに。

ふたりが同じことができるとタスクは早く終わる

我が家には1歳10ヶ月の長女と5ヶ月の次女がいる。最近の悩みはもっぱら僕から母乳が出ないこと。次女と妻だけができるコミュニケーション。悔しい。つまり我が家では授乳が妻に属人化している。長女のときはミルクだったからそうではなかったのだけれど。

妻が夕飯を作っている最中に娘が泣き出して授乳をすることがある。このときに僕は妻ほど料理が上手ではないにせよ、多くの場合はなんとかバトンタッチして調理を進めることができる。もし夕飯を早く済ませないと子どもを寝かしつける時間が遅くなってしまうから、夕飯の時間が遅れないというのは我が家では非常に重要なことなのだ。

このように夫婦ふたりのスキル差があまりない場合、どちらも同じタスクをこなすことができるため素早く終えることができる。逆にいうと、特定の家事に対して夫婦間のスキル差がある場合に「料理は妻氏が得意だから妻氏がやる」といったように分担してしまうのはリスクがある。

スキル差が分担を生み、分担が属人性を生む

たとえば初めての出産で里帰りをして1ヶ月くらい妻氏が実家にいるケースを考えてみよう。夫氏側も週末に会いに行きはするものの、育児に従事する時間で比べると妻氏とは雲泥の差が生まれる。この1ヶ月で育児に関するスキル獲得レースで妻のスタートダッシュに遭い、多くの場合は置いてけぼりにされる。

里帰り先から妻氏が帰ってきてやっとはじまる新生活。ここがスキル差を埋めるラストチャンス。ここでキャッチアップしたい。とりあえず見様見真似で自分だけでやってみる。うーん、妻氏ほどはうまくできない。そんな中で仕事も忙しかったりすると「妻氏の方が上手にできるから育児関連のタスクは妻氏がやる」という暗黙の共通認識が生まれかねない。

この共通認識ができた瞬間に妻氏側が環境の個別最適化のインセンティブが働く。夫氏は育児関連のタスクをしないのだから作業環境を自分が一番やりやすいように変えていく。便利グッズを買ってみたり、モノの配置を変えたりしていく。

こうなってしまうと夫氏側の育児参加のハードルは更に上がる。「あれ?この前まではここにあったものが見つからないんだけど」といったコミュニケーションが増える。正味の作業時間よりも作業を開始するための時間の方が長くなったりしてお互いイライラしてしまう。

このように、スキル差を理由に分担をした場合、相手による環境の個別最適化が起きて特定タスクへの参入ハードルが上がっていく、さらに属人化が進む。スキル差が埋まらず、さらに属人性が進む―といった形で悪い循環に入ってしまう。このようにして家庭のワークフローはサイロ化され、タスクがなかなか終わらないというシーンが増えていく。

一緒に作業をして相手を理解する

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スキル差をどう埋めるか。ペアリングという手法をおすすめしたい。なんのことはなく、特定のタスクを一緒にやるだけ。分担をせずに、ふたりでやる。

できればリードする方が考えていることを常に口に出し続けるとより効果がある。常に話しているくらいのイメージでいい。
「あ、うんちしたかも」「ちょっと匂い嗅いでみよう」「これはしてそう」「おむつ脱がす前に替えのおむつとおしりふきを用意」「おしりふきは2枚くらい出しておく」
といったように作業をしながら考えていることを口に出す。最初の段階では教えてあげる方が実際にやって見せてリードしてあげる。僕が所属しているPivotal Labsでは教える側がリードするこの期間をI Doフェーズと呼んでいる。

相手の理解が進んできたら、次の機会では教わる側がリードしてみる。You Doフェーズに入る。教わる側もそのときに考えていることを話しながらやってみる。教える側はリアルタイムのフィードバックをどんどんしてあげる。「いいねいいね」「あ、先にオムツ替えのシートを敷いたほうがいいよ」などなど。

ひとつのタスクを2人がかりでやるのは非効率に思えるかもしれないけど、スキルトランスファーとナレッジシェアが素早く進む。言語化しづらい要素も伝えやすくなる(たとえば、お好み焼きのひっくり返し方を教えるのは文字や写真ではむずかしいがとなりで見せてあげれば簡単)

このようにしてペアリングを通じてスキル差を埋めていく。スキル差が埋まることで相手がそのタスクを行える環境を保つインセンティブが働く。勝手にモノの置き場を変えることが減ったり、変えた場合にも教えてくれるようになる。

スキル差を生まないためにも男性の育休取得はおすすめ

育児に関してスキル差が生まれがちなのは多くの場合に女性の方が育児への従事が早くなりがちな環境があるからだ。(「そもそも育児は女性がするものだ」というバイアスも大きな問題だけどここでは無視)

僕は今年2.5ヶ月の育児休暇を取得して、こうした差を生まないようにすることができたと思うし、この状態を継続できるようにするのはどうしたら良いのか?ということを考える時間を得ることができた。というわけで男性の育児休暇、おすすめです。

育休中のことはこちらに書いたので興味がある方はこちらからどうぞ

まとめ

- 育児・家事のスキル差を生まないことが重要。育児休暇がおすすめ。
- スキル差が属人化を生むのでスキル差をペアリングを通じて埋める
- 作業環境の個別最適化が参入のハードルになるため、そうさせない工夫を継続する


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