
bluffとshift
今回は初級者から中級者へ向けて、
bluffの考え方について書いていきたいと思います。
また、bluffをする上で難しいspotを扱い、shiftという概念について説明することでbluffが難しいspotを判定できるようになることを目指します。
均衡の説明を行いますし、専門用語は若干出てきますが、どのようなハンドでbluffを行えばよいのかよくわからない。
という人がターゲットになります。
当記事では
GTOWizard 6max 100bb 50nl GTO-GTO
を採用しています。
Riverにおけるbluff
一つ簡単なspotについて考えてみたいと思います。

BTN vs BB SRP
Flop Q84
x/c
75% cb
Turn 2
x
x
River 9
?
上のspotは標準的なSRPのRiver におけるspotです。
ここで均衡はどのようなhandをOOPからBluffしていくでしょうか?
少し考えてみてください。

正解としてはKhi 以下のハンドをbluffしていくことになります。
このようにbluffするハンドの概略をつかみたい場合、GTO Wizardのbreakdownタブが便利です。

詳しく見てみると、Ahi ~ 3rd pairのハンドは基本的にbluffに選定されていないことが分かります。
ものすごく基礎的な話ですが、
Bluffは基本的に弱いハンドで行った方が利益的です。
このことについて少し説明をさせて下さい。
・BluffとEV比較

上の図は当該spotにおけるK5s(すなわちKhi)のactionごとEVです。
bet 51%ではEVは1.01
すなわち、
ハーフpotのBluffをすると1.01bb利益的になるということです。
さて、Bluffを行わないハンドである74sについて見てみましょう。
74sは4hitすなわち4th hitになっています。

51%betのEVは2.57となっています。
これはK5sでのbet EVよりもと高い値となっています。
74sでbetをする方がEVが高いにもかかわらず
K5sでbluffを行い74sはpure checkをしています。
実際4を持っていれば相手の4hitでさらに強いキッカーをblockしていますし、KJなどを相手がcallしてくれればvalueとしても機能するかもしれません。
これは非常に基礎的な均衡理解を問う問題ですが、
何故GTOはこのように
他のハンドに比べてEVの低いhandでbetを行うのでしょうか?
こちらについて考えてみてください。

この問題について当たり前と感じることのできない人は混合戦略と純粋戦略もしくはEVの理解が甘いかもしれません。
こんなのは当たり前で、均衡はEVの低いアクションをとりません。
ここでいうEVの低いアクションとは
他のハンドに比べてEVが低いアクション
ではなく
他のアクションに比べてEVが低いアクション
のことを指します。

K5sがbluffを行うのは
他のアクション、特にcheckに比べてbluff betのEVが高いからです。

74sがbetを行わないのは
他のアクション、betに対してcheckのEVが高いからです。
特定のハンド、特に大して強くないハンドでbluffを行うかどうかというのは
checkに対してbluffのEVが高いかどうかで決定されます。
check EV > bluff EV → check
check EV < bluff EV → bluff
というだけです。
言われてみれば当たり前に感じるかもしれませんがこの意識が低い人は非常に多いです。
blockerがいいからbluffを行うわけではないし
valueぽく見えるからbluffを行うわけではありません。
blockerがよくfoldが沢山取れたらbluff EVが高くなりやすく、
check EV < bluff EV となりやすいので bluffを行うことが多いかもしれません。
valueぽく見える場合はover foldをしてくれてbluff EVが高くなりやすく、
check EV < bluff EV となりやすいので bluffを行うことが多いかもしれません。
けれど常に、bluffを行うかの原則は
check EVと bluff EVの比較
によって決定されます。
このことを理解していると一つの法則が分かります。
それは
check EVが低ければbluffに選択されやすい。
ということです。
これも当たり前です。
check EVが低ければbluff EVが大して高くなくとも
check EV < bluff EV
が達成されやすいというわけです。

元の例を見てみると
画面上部のマンハッタングラフで左のほうのにbetハンドが集中しており
真ん中らへんは打っていないことがわかります。
この図は弱いハンドほど左に配置しているので
「Bluffは自レンジでなるべく弱いハンドから選んでいる」
というわけです。
Riverにおけるbluffの選定とは畢竟
自レンジで弱いハンドは何があるか?
を探す作業が大半を占めます。
Riverにおけるbluff選定についてまとめておきましょう。
弱いハンドはcheck EVが低く
check EV < bluff EV
となりやすい為、
Bluffの筆頭候補になる。
Riverでbluffを適切に打つには
自レンジで弱い順にハンドを探していく
という作業が大事。
・混合戦略のbluffについて
この章は読み飛ばしていただいても大丈夫です。
少しだけ上記のspotについて深堀してみましょう。

上の図はこのspotでのKJsの扱いです。
check EV 1.22
bluff EV 1.21
と表示されていますが、このようなEV数値の差はsolverの計算誤差と判定し、check EV = bluff EVと解釈します。
このような状況ではご存じの通り混合戦略でbetを行います。
頻度構築をする
というわけです。
そもそもなぜ均衡は頻度でbluffをするようなハンドがあるのでしょうか?
これはAKQゲームを考えてもらえればわかりやすいですがvalueを最大化するためです。
bluffの足りないbetは相手のbluff catcherからcallをもらえなくなってしまうため、valueが伸びません。
valueも打つ以上その頻度に応じてbluffを用意するわけです。
bluff handはおおきく2種類あります。
pure bluffとid bluffです。
pure bluffは既に述べたように単にbluffのEVが高いからbetをしています。
一方でこのような混合戦略のbluffは
bluffとcheckでindifferent
すなわち頻度のためにbluffをしているhandになります。
よく「この辺りまでbluffしないとbluffが足りない。」
というような主張を見ますが、そのハンドがpure bluffの場合は単にEVのためにbluffをしているわけで、「足りない」という表現は不適切に思います。
「足りない」というなら頻度の意図を含むはずで、id bluffに関する言及であるべきです。
まぁ、これを理解したうえで「足りない」という単語を使っても齟齬はないので、当記事でもこの点は強く意識せずラフに、
「弱いハンドから十分なbluffを用意する」
という立場で説明をします。
FlopやTurnにおけるbluff
さて、Riverではbluffを弱いハンドから選びましょうと話をしてきましたが、FlopやTurnでは少し事情が異なります。
FlopやTurnはまだランアウツがある以上、semi-bluffと呼ばれるものが存在します。
Flush draw や straight drawというハンドはそのEQがRobustでpotが膨らんでもEQがあまり毀損しません。
総じてbluffのEVが十分大きいことが多くbluffに選ばれやすいです。
厄介なのがこれらのハンドはEQがそもそも低くはないということです。
このためEQの低いハンドからbluffをするわけでなく、このようなdraw良型の中EQのhandがBluffに回ることが多いです。
一つ例を見てみましょう。

上の図はAK4ボードでのBTN cbです。
マンハッタングラフはlow EQによっておらず広く分布してover betを打っていることが分かると思います。
その他にも要因はありますが、基本的にEarly streetほどdraw 良型からbluffに回します。
この構築は一般的にも慣れ親しまれていると思います。
FlopやTurnではdrawでbluffするということはできる人が多いのではないでしょうか?
軽くまとめておきます。
FlopやTurnなどまだボードが確定していない場合は
range内でdraw 良型を探してbluffする。
Bluff過少のspot
さて、以上の議論を基に本記事の本題であるbluffの難しいspotについて説明をしていきます。
今までの議論を振り返ると
River
自レンジ下限をbluffする
Flop Turn
draw良型をbluffする
というのが基本方針です。
裏返せば
River
自レンジ下限が分かりづらい
Flop Turn
draw良型が存在しない
spotでbluffは困難になります。
一つ例を見てみましょう。

UTG vs BB SRP
Flop Q74
x/c
50% bet
Turn 6
x
x
River A
?
このspotではどのようなハンドをBluffするべきなのでしょうか?
少し考えてみてください。

shiftについて
このspotでの均衡のbluffはざっくり
low pairをbluffとして扱います。

rangeを見てみると

6hitや4hitでbluffを行っていることが分かります。
正解出来ましたか?
Riverでこの問題を出された場合に結論にたどり着くためにはレンジ精査の能力が必要です。
特定のspotでのhand selectionを考える場合まずはそのnodeに持ってきたレンジを適切に考えます。
今回BBは
Flop 50% cbにcall
Turn donkをせずcheck
という意思決定を行っています。
今回の例であればレンジが大きく変動したのはFlopのcallです。
すなわち、
Flop callしたレンジの中でRiver時点で弱いもの
をBluffとして選定する必要があります。
ここで難しいのは
Flop callした最も弱いところをRiverでbluffするわけではない。
ということです。
pokerではのちのストリートで落ちたカードでEQが変動し、弱いハンドが強くなることがあります。
ボードの落ち方によってEQがどのようにshiftしてきたかを考える必要があるわけです。
具体的にみてみましょう。

Flopはどのようなハンドをcallするでしょうか?

Flop時点のdefence下限はKJhiもしくはdrawです。
しかしながらTurn で6が落ちたことによりSDは6hitもしくはStraighに昇格します。

さらにRiverではFlushが完成し、Aも進展しています。

このように2度の激しいshiftが発生しているので
RiverではKJhiの1種を除けば4hitや6hitはレンジ下限に属しています。
hitが下限になってしまったためにbluffの候補として有力になってきているわけです。
hitがブラフに回る理由を理解できたでしょうか?
基本的にshiftの激しいボードで適切なbluffを作るには
shiftを正しく把握する。
という当然のこと以前に、
ある程度強いハンドを持っているときに下限を疑う。
という精神が重要です。
このボードでbluffが難しいのは
4hitや6hitでFlop callしたにもかかわらず、
Riverでレンジ下限であることを疑わなくてはならず、
さらには
結構ゴミがいる相手のレンジに対して自身のレンジ下限だからという理由でbluffを撃ち込まなくてはいけないからです。
shiftが乏しいボードは弱いハンドをbluffしておけば事足ります。
一般的に言って、
bluffするハンドの役が強いシチュエーションはbluff過少になりやすい
ということは判ると思います。
良く解説などで。
「ここはbluffが少なそう」
みたいなことを言っている人がいますが、多くの場合はこのケースに該当しているはずです。
心構えとか
実践でこのようなbluff過少spotを見つけたり、その時に適切なbluffハンドを発見したりするためには、この概念を理解しているだけでは不十分です。
厄介なことはある程度役が強いハンドを持っているとSDVがありそうにみえる。
ということです。
その誤謬を破壊して適切な思考をするためにはそもそもの心構えが大切です。
全spot全situationで自身のレンジ下限・相手のレンジ下限は何かを考えながらpokerをして下さい。
このような絶え間ない努力を続けて初めてまともな思考が持てるようになるはずです。
最後に?
ここまでお読みいただきありがとうございました。
長くなりましたし伝えたいことは書いたので一旦筆をおきます。
shift関連以外にも
そもそものPF rangeが強いsituationでのbluff
raise bluffについて
drawが乏しい状態でのbluff選定
Exploit時の考え方
などなどbluffと人間の思考の力学を探るのは面白いと思います。
「bluffが少なそう」みたいな感覚に対して座学をする人が手早く掴める説明をしたくて書きました。
もし評判が良ければほかのspotについて追記するかもしれません。
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当記事の理解に手助けとなる記事をいくつかおいておきます。
どの辺で手助けとなるか考えてみて下さい笑
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