見出し画像

受賞アイデアに注目!第 2 回 Google Cloud 生成 AI Innovation Awards レポート

こんにちは、Google の AI「Gemini(ジェミニ)」の公式 note 編集部です。

現在、生成 AI の進化により、企業のビジネス変革を加速させる重要な転換期を迎えています。国内でも、Google Cloud の生成 AI サービスを使って成果を上げる企業が続々と登場しています。

このレポートは、Google Cloud Japan 主催の「Generative AI Summit Tokyo '24 Fall」で開催された「第 2 回 Google Cloud 生成 AI Innovtion Awards」の内容を編集して掲載しています。

企業が生成 AI をどのように活用し、どんな価値を生み出しているのか。アワードに参加した各社の挑戦から、あなたのビジネスでも生かせる生成 AI 利活用のヒントが見つかるかもしれません。


Google Cloud 生成 AI Innovation Awards って、何?

Google Cloud 生成 AI Innovation Awards は、生成 AI を使った新しいソリューションやアイデアを表彰するコンテストです。Google Cloud の最新 AI 技術で、企業や組織が実現した優れた取り組みを評価します。今回は 100 を超える応募から、12 組が最終選考に駒を進めました。

次の 3 つの基準で審査されます。

技術的革新性
最新の生成 AI 技術の効果的な活用と、独自の工夫を評価。ただ使うだけでなく、新しい使い方を生み出せているかがポイントです。

実用性と実現可能性
提案された解決策が、実際の課題解決にどれだけ役立つか。アイデアだけでなく、具体的な成果も重視します。

社会的・経済的影響
提案内容が社会や経済に与える影響の大きさ。より多くの人の生活改善や、社会課題の解決につながる取り組みが評価されます。

審査には、業界の専門家による評価と、会場やオンラインからの投票を採用。専門家の目線と実用的な視点を組み合わせることで、専門性と先進性、そして実現可能性のバランスの良い評価を目指しました。

栄光の受賞事例発表!

今回は最優秀賞のほかにも教育部門賞や自治体部門賞、優秀賞と多くの素晴らしい挑戦が表彰されました。次に受賞された企業たちを紹介します。

奈良教育大学、奈良県立教育研究所は、Gemini で教員の業務効率化と学習者の理解度向上を実現を目指す先進的な取り組みを発表し、教育部門賞に輝きました。

自治体部門賞の志摩市役所は、「Ask サチ子」という自治体 DX を加速する生成 AI アプリを開発。行政サービスの効率化と市民サービスの向上を実現しています。

優秀賞には 2 社が選出されました。アカチセ株式会社は、Vertex AI で会議の動画から業務フローを自動生成するシステムを開発。株式会社テレビ東京は「AI プレビューしてくれる君」で、放送コンテンツの品質管理の効率化を実現。フィッティングクラウドは診療録から医療文章を自動生成するサービス「CocktailAI」を開発しました。

最優秀賞の中外製薬株式会社「Chugai AI MediMentor」は、生成 AI で次世代の創薬イノベーターを育成。医薬品情報の正確な伝達と医療従事者の学習支援を組み合わせ、医療の質向上に貢献する点が評価されました。

生成 AI は、教育、行政、医療など、幅広い分野で着実に実用化が進んでおり、生成 AI の活用が社会に浸透しつつあることを示す兆候となっています。これからのさらなる進化に期待が高まります。

教育部門賞: 奈良教育大学、奈良県立教育研究所 - 学校教育に Gemini をどう活かす?

奈良教育大学、奈良県立教育研究所はGemini の技術を活用し、教育現場における AI 活用の新たな可能性を示しました。
具体的には、 AI による英会話学習環境、個別最適化された対話学習、ゲーム感覚でタイピング スキルを向上させる仕組みなどで教員の業務を効率化しながら、学習者の理解も深める、AI ならではの活用法を提案されていました。

生成 AI で、「一方的な学習」は「双方向の学び」に変わってきています。学習者の反応や理解度を見ながら、適切な補足やアドバイスを行い、一人ひとりに合った学習環境を実現しています。

自治体部門賞: 志摩市役所 - Ask サチ子で行政サービスをもっと便利に

志摩市役所は、行政サービスを DX 化する生成 AI アプリ「Ask サチ子」を開発。市民サービス向上と職員の業務効率化を実現する新しい仕組みとして評価されました。
「Ask サチ子」は、Gemini を活用して志摩市特有の行政情報や地域の特徴を組み込まれているため、市民の質問に素早く的確に回答することができます。マイナンバーの入力制限など、個人情報を守るセキュリティ機能も備えています。

ベテラン職員の知識や経験をデジタルデータとして共有できるのも特徴で、若手職員への引き継ぎがスムーズになり、行政サービスの質の維持・向上に貢献しています。
AI への指示入力を自動でサポートする機能もあり、誰でも簡単に使えるよう配慮されています。

優秀賞: アカチセ株式会社 - 会議の動画から業務の流れを自動生成

アカチセ株式会社は Gemini を使った画期的な業務支援システムで優秀賞を受賞。
このシステムは、会議の動画を分析し、業務フローを自動生成するものです。従来、業務フローの作成には、複数回の打ち合わせ、議事録作成、図の手書きなど、多くの時間と手間が必要でした。しかし、このシステムの導入により、会議を録画するだけで業務フローが自動的に完成するため、業務の可視化と改善を効率的に進めることができるようになりました。

具体的には、会議中の会話を AI が自動で分析し、発言内容に基づいて業務フローを図式化します。これにより、担当者間での認識の齟齬を防ぎ、スムーズな業務遂行を促進することができます。

音声の処理から図の作成まで、すべてを自動化できたため、業務改善の検討時間が大幅に短縮され、より重要な議論に時間を使えるようになりました。

優秀賞: 株式会社テレビ東京 - 「AI プレビューしてくれる君」で放送内容をチェック

テレビ東京の「AI プレビューしてくれる君」は、放送内容の品質を効率よく確認する新しい仕組みを評価され、優秀賞を受賞しました。Gemini で、映像の中の間違いや不適切な表現を自動で発見することができます。

映像の中の文字、画像、音声など、あらゆる要素を総合的に分析するのが特徴で、テロップの間違い、不適切な言葉遣い、事実関係の誤り、著作権の問題まで、人の目では見逃しやすい細かな点も発見します。

さらに過去の放送コンテンツや修正履歴を学習することで、より精度の高いチェックを可能にしています。文字認識の誤りと実際の間違いを区別する機能も備え、無用な指摘を減らす工夫も見られました。動画は短い区切りで処理され、効率よく分析。処理された結果は一覧表の PDF にまとめられ、担当者へ自動で届きます。

優秀賞: フィッティングクラウド株式会社 - 記載テンプレートを利用した生成 AI による診療録からの医療文章生成サービス CocktailAI

フィッティングクラウドが開発した「CocktailAI」は、医療現場で医師が抱える医療文章作成の負担を軽減する生成 AI ソリューションです。あらかじめ用意されたテンプレートを活用することで、必要な文章を効率的に生成できるのが特徴です。

医療現場では AI が生成した文章に誤りがあってはならないという懸念がありますが、CocktailAI では生成 AI のタスクを単純化し、情報抽出(認識・推論)の特性も踏まえることで、この懸念の解決を目指しています。さらに、新しい汎用モデルを積極的に活用することで、コスト削減も実現しています。現場での評価も上々で、医師のタスクが大幅に軽減すると期待が寄せられています。

最優秀賞: 中外製薬株式会社 - 次世代の医薬品スペシャリストを育てる Chugai AI MediMentor

中外製薬株式会社が開発した「Chugai AI MediMentor」が、第 2 回 Google Cloud 生成 AI Innovation Awards で最優秀賞を受賞しました。このソリューションは、医薬品情報の正確な伝え方と、医療従事者の学習をサポートする革新的な仕組みが高く評価されました。

「Chugai AI MediMentor」は、膨大な医薬品の説明書の内容を効率的に学習し、医療情報担当者(MR)が情報を正しく理解し、医療従事者に効果的に伝達できるようにするためのシステムです。 Vertex AI を使った対話練習の仕組みで、MR の知識を深め、医療従事者への情報提供を最適化します。

特に注目されたのは、医師との会話をシミュレーションできる機能です。システムは医師からの質問を生成し、その場で適切な回答の根拠と必要な情報を示します。練習後にはフィードバックや改善点も提案し、MR の継続的なスキルアップを後押しします。

受賞者からは「わずか 3 日の開発期間でこのシステムを作り上げた、弊社のエンジニアをはじめ自社の内製力の高さを実感できました。社内のさまざまな業務にこのシステムを広めていきたいです」といったコメントがありました。

また、審査員からは「生成 AI は、何か投げて返ってきておしまいということが多いと思います。しかし、対話を重ねながら使う人が成長できるというのは、非常に革新的だと感じました」と評価されました。

審査員の総括

今回の Google Cloud 生成 AI Innovation Awards では、生成 AI の使い方に予想以上の広がりが見られました。文章や画像を作る一般的な使い方を超えて、各企業が独自の発想で可能性を追求した点が高く評価されました。

そして、審査員の総括として、「本当に多様なアプローチが見られたのが印象的でした。ふつうに文章をつくるのではなく、メーターを見てドローンを動かしたり、医療業界で説明のシミュレーションをしたり。来ていただいた方々にもさまざまなインスピレーションがあったかと思います」という 深津貴之氏 からのコメントで締め括られ、生成 AI Innovation Awards は幕を閉じました。

多くの企業が、生成 AI を活用して業務効率化を超えた新たな価値創造に挑戦しています。顧客体験の向上や革新的なサービス開発など、ビジネスモデル変革への試みが目立ちました。 審査員も順位付けに苦心するほど、各社の提案は工夫に富んでおり、生成 AI の無限の可能性を感じさせる機会となりました。

第 2 回 Google Cloud 生成 AI Innovation Awards を振り返って

「第 2 回 Google Cloud 生成 AI Innovation Awards」で見えてきたのは、生成 AI の実用化が確実に進んでいる姿。受賞企業の事例は、生成 AI が実験段階を超え、実際のビジネスで価値を生み出していることを示しています。

各社は独自の視点で生成 AI を活用し、教育、行政、業務改善、放送、医療など、幅広い分野で成果を上げています。それぞれが自社の強みと生成 AI を組み合わせ、新しい価値を生み出しているのが印象的です。

生成 AI で「できるかもしれない」から「できる」へと進化。Google Cloud は、企業の挑戦を技術とサービスの両面から支え続けます。生成 AI は日々進化し、活用の幅も広がり続けています。次回の Awards では、さらに多くの革新的な取り組みとの出会いが待っているはず。皆さまの会社での取り組みもぜひご紹介ください。

Google Cloud の生成 AI に少しでも興味を持たれた方は、ぜひ Google Cloud の生成 AI 活用事例集を参考にしてください!

【参考】
第 2 回 Google Cloud 生成 AI Innovation Awards の全作品はこちら:生成 AI Awards