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カブアンド、得とかファンとかではない理由で乗ってみた

サービス利用したら株がもらえる「カブアンド」。たまたまサービスローンチ前に知って、「面白いなー」という理由だけで申し込みました。いちおうもともと利用しているサービスと料金比較してもほぼ変わらなかったし、目論見書は特に気になるところもなく。

で、よくある購買行動として「買った後にレビューを漁る」というのがありますが、調べてみたら論点が「損か得か」ばかりで、投資だ株だという話だから理解はしつつ、このプロジェクトの判断基準はそれだけじゃなくない?と思ったのでメモしておきたいと思います。

なお、私は前澤友作さんのファンではありません。ただ、ZOZOTOWNは昔ウェブ制作していた頃に出会って、当時斬新だったUI/UXに痺れてよく買っていました。その頃のスタートトゥデイのコーポレートサイトも、メッセージがドーンと書かれていて素敵だったなというくらいの思い入れ感です。

なぜ買ったのか?

今回、私は「カブアンドモバイル」と「カブアンドひかり」を申し込みました。でも、私はモバイル通信やインターネット利用というサービスを単独で買ったつもりはなく、2つの「体験」を買ったらサービスがついてくるくらいに思っています。それくらい、この体験のインパクトが大きかったのです。

企業を一緒に盛り上げられるサービス購入体験

ひとつめの体験は、本来当たり前なのになぜか今は薄れてしまっている「企業を一緒に盛り上げられるサービス購入体験」です。購入体験を購入するって不思議だけど、そこにとてもワクワクしてお金を払いたくなりました。クラファンに近くて、でも、株だから届いたら終わりでないところが好きです。

何か物を買うとき、私はもともと商品やサービスそのものの価格に「応援」や「期待」が上乗せされている気持ちで買っています。そこまでの研究開発費やマーケティング費だけでなく、いいものを作った人がちゃんと評価されてほしいし、次の新しいワクワクにも期待したい。サービスや商品を買うことそのものがもうすでに投資のようなものだと。

でも、虚しさもありました。なぜなら購入というアクションに対して返ってくるのは、企業のポジティブな変化ではなくポイントやクーポンです。応援や期待を込めて支払っているのに、なぜかお金が返ってくる。なんでここの二者間でお金をぐるぐるしているんだと。しかも、「また買えるから他には行かないでね?」という囲い込みや「お得だから好きなんでしょ?」という価値観の決めつけ。純粋に「いいね!」と思う気持ちが無碍にされているような、お金でしか繋がれない悲しさのような、そんなものを無意識のうちに感じていました。

もちろん上場企業なら株式を買えばその企業と別の関わりを持つことはできるんだけど、あくまで「購入」軸から見た時に、消費と投資が切り離されているのがなんかちょっと不思議で。何かの商品やサービスがいいと思って購入しているのに、投資家にとっての重要指標の数字をわずかばかり押し上げるしかできない感じのズレ。「サービスを買ってくれてありがとう。でも、それはそれ。別で株買ってね」という肩透かし感がありました。

そして、コモディティ化もなんだかなと思っていました。特に今回カブアンドが提供する6つのサービスは、「もうどこでもいい。選ぶのがしんどい」とさえ思うカテゴリでした。いちおう大阪にいた頃は電気も自由化されたものを使っていたけど、思い入れがなさすぎて社名も思い出せません。モバイルも格安SIMにした当時、どのサービスにすればいいかわからなすぎて比較サイトを見て決めましたが、そのときの判断基準は値段やスペック。企業として応援したくなるようなビジョンやコンセプトに1秒も触れることなく、申し込んで終わり。それに仮に公式サイトを見たところで、大したことは載っていないんですよね。プランと料金ばっかりで。

そんな当たり前の購入体験をぶち壊してくれたのがカブアンドでした。会社のビジョンをしっかりと提示する。購入したら一緒に企業を盛り上げる仲間にもなれる。ただし、サロンほど閉鎖的で狂信的なものでもない。

私が求めていたのはこのくらいの温度感、距離感だったんだと提示されて初めて気づきました。サービスや商品の恩恵を受ける本人が「購入」を通してできるものであり、消費者という「購入した瞬間」だけの点の関係でなく、最安やお得という値段でしか繋がれないないものでない。蚊帳の外でもなく、従業員ほど重くもない。めっちゃおいしいポジションだなと。

いま用意されているサービスは「乗り換え」に特化したコモディティ化されたサービスでしかなくて、サービスや商品そのものの価値だけで判断したい人にとっては得られるものはないのかも。でも、私は新しい応援・参加の形を企業側が提示してくれたことが嬉しかったです。国民総株主も素敵だと思うけど、この形で応援させてくれる企業が増えたらいいなと思っています。私が本来この形で応援したい企業はまた別にあるので、カブアンドに対してはその広がりを応援したい、期待したい、と思っています。

従業員でもないのに未公開株を手に入れられる、エンターテイメント体験

もうひとつの体験は、投資家でも従業員でもないのに未公開株を手に入れるという「エンターテイメント体験」です。

一度大手のグループ企業で働いてから、ベンチャーやスタートアップを何社か経験している身としては、ベンチャーやスタートアップにはそこでしか味わえない高揚感があります。それは0→1に関わる面白さ、未公開株という夢を持つ体験です。その未公開株が「紙切れになるかもしれないもの」としか語られないことについて、正直びっくりしています。

だって、スタートアップに入社するって結構覚悟のいることなんですよ。環境も整っていない、うまくいかなきゃ減給やリストラだってされる。廃業の可能性もある。そういう企業に入社する必要もなく、きちんと提供されるサービスを購入するだけで0→1フェーズの企業の夢を一緒に見られるっておいしいとこどりだなと。

なので、私はカブアンドというプロジェクトが仮に大失敗したとしてもそれを含めてのエンターテイメントだと思っています。勝つか負けるかわからないサッカーの試合のVIPシートに招待されたようなもの。あとは、裏側がわかるという意味ではバックステージパスかな。

普通の使い方をする限りカブアンドに人生をかける人は顧客兼株主にはいないはずで、「失敗しても大丈夫」という安心がむしろ価値ではと思います。失敗しても何かしら得られるものはあるはずですしね。ここの体験価値を無視して計算するのはフェアではないんじゃないのかな。

もちろん、最高の高揚感はうまくいったときだと思うし、楽しみにしています。

投資だからリターンは必要のはずだけど

株投資である以上リターンがないと意味がないのは確かです。なので、私は「体験価値として捉えたら必ずプラス。プロジェクトが失敗してもリスクはない。ただ、株で得られる金銭的なリターンが自分の見込んだ額あるかどうかは別で考えなければならない」という感じで捉えています。

でも、株に対してお金を払っているわけでなく、サービス料金も今と同じほぼ同じとなると、いくらのリターンがないといけないのかは意外と難しいですね。どこまでいくと「成功」という肌感が生まれるのか?仮にこれが自社株だったら最低でも数十倍以上は欲しいけど(相応の苦労をするので)。面白すぎて元取れている気持ちだからなぁ。

なんかこれは、まだいろいろ不透明な段階での予想だけど、もしかするとカブアンドからの金銭的なリターンよりも「会員数が◯◯◯万人になったんだ!」とか「株配り企業が◯社増えている!」を追いかける方が楽しくなっちゃうかもしれないです。私の性格上は。好きな企業の株を持って長期保有するのに近くなるのかな。

スタートアップやベンチャー未経験だと未知の世界かも

今回あまり発信していない層の中に面白そうだからやってみた人はきっとたくさんいるのだろうけど、その中でもスタートアップやベンチャーで経営を身近に感じる経験をまだしていない人がいたとしたら、はじめて経験できることはたくさんあるだろうなと想像しています。

資本主義経済の仕組みまでいくと、私には正直よくわからないけど、会社の仕組み、企業の努力なんかを経営に少しだけ近いところで垣間見られるのって、日々の自分の仕事の捉え方が少し変わるかもしれないと思っていて。「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」というのは、何も株投資の仕方だけではないんじゃないかなと思います。経営を知ると、従業員としての立ち回りも、会社選びも変わってくる。ひとりひとりが自力で強くなれるように、そこも含まれている気がします。

そういう意味では、カブアンドでもそうでなくてもいいけれど、子どもが買える商品やサービスを扱う株配り企業が出てきて欲しいなぁ。子どもが買い物を通して企業の仕組みを理解できたら、直感的でわかりやすそう。次の世代の金融教育につながってほしいと願うばかり。

ちなみに、今回たぶんひと通りのインタビュー動画といろんな考察に目を通したけど、こちらのポッドキャストに一番共感しました。ビジネスやプロモーション作る目線でもうまいよね、そうだよねー!と思いながら聴いていました。

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まゆ
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