campagnolo EKAR 1×13speed
2020年秋、カンパニョーロが13速を投入しました。MTBやグラベルロードの世界では1×(フロントシングル)が当たり前になっており、このエカルもグラベルロード用という位置付けで発売されたコンポーネントです。
30年以上前からシマノ社とカンパニョーロ社はコンポーネントの主導権を争い、お互い切磋琢磨して開発を進めて来ました。決定打はいくつかありますが1991年、シマノがデュアルコントロールレバー(手元シフト)を発売したのを機に世界のコンポーネント勢力図は一気にシマノに塗り替えられました。カンパニョーロはすぐさまエルゴパワーを発売し、改良を重ねシマノに対抗。2009年シマノは7900デュラエースを電動化、Di2を発売。カンパニョーロも電動化を早くから進めてきましたが実用化が遅れ断念。11speed化の方向に進みました。10速電動に出遅れたため11速化に逃げたかのように見えましたが、実際は11速化はもっと意味のある進化でした。10速時代には当たり前だったノーマル(53-39T) or コンパクト(50-34T)という概念がなくなるという変化です。フロントギヤは52-36Tがノーマルとなり、リアスプロケットが一枚増えたことにより従来のノーマルでのトップギヤとコンパクトでのローギヤの両方の幅広いギヤ比を手に入れました。
そんな中、MTBではSRAM社が1×11speedを提案。フロントが30〜34Tに対し、リアスプロケットは10-42Tと超ワイドレシオになりました。ホイールの29インチ化もあり新しいギヤレシオはすぐさまMTBの常識になりました。その後SRAM社は1×シリーズを拡充。今では1×12speed、10-52Tとさらにワイド化されました。ロード部門ではカンパニョーロが2×12speedとなっていますが、この度、1×13speedのエカルが発売されました。
前置きはこのくらいにしてこのエカルの13speedの意味と価値について少しふれておきます。
エカルのギヤバリエーションは
トップギヤは9T。ローギヤは36Tまたは42Tまたはトップギヤ10Tでローギヤは44T。
フロントギヤは38〜44Tの偶数ギヤが選べる。
トップとローの情報だけでは凄さが伝わらない。ギヤ配列を見てください。
①9-10-11-12-13-14-16-18-20-23-27-31-36
②9-10-11-12-13-14-16-18-21-25-30-36-42
③10-11-12-13-14-15-17-19-22-26-32-39-44
この並びで気づきますか?トップ側6枚はクロスレシオなのです。
シマノの11-34T(11speed)を使ってる人は多いと思いますが、ギヤの並びは
11-13-15-17-19-21-23-27-30-34
一見均等に見えますがトップ側の11と13では18.1%の変化に対しロー側では13.3%。とロー側の方がクロスです。トップ側を使う45km/hあたりから変速が役に立たなくなるのです。エカルのギヤ配列だとオンロードでの高速領域でクロスレシオ、グラベルや登坂ではワイドレシオになっているのです。
カンパニョーロ社ではフロント2枚なら11speed。シングルなら13枚は必要だろうという結論に至ったのではないでしょうか。今回の13speed化は単に話題作りのための多段化ではない、カンパニョーロのギヤ比に対する哲学を感じます。
こういうこだわりがバイク全体の扱いやすさに繋がる。多少の変速スピードや安定感の優劣。価格などで他社より気難しいところがあってもこのカンパニョーロの気持ち良さに変えられないのです。
価格は23万円強(仕様により異なる)
次回はバイクに組み付けた状態でレポートしますね。
※ちなみに「エカル」ではなく「エカッー」と発音するそうです。声に出して言ってみましょう。