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彦根の足軽の家は庭付き一戸建て!彦根城周辺に約1200人の足軽が住んでいた?江戸時代の足軽のお宅におじゃまします!

彦根城に行ったことがある人は多いと思いますが、彦根市指定文化財である足軽組屋敷まで行ったことはありますか?

気になって足軽組屋敷に行こうとは思っていたけれども道が迷路みたいでなかなかたどり着くことができずにあきらめた人もいるのではないでしょうか。
 
何故あの足軽組屋敷の周辺は迷路みたいなのか、そしてその中はどうなっているのか?辻番所と隣接する旧磯島住宅を訪問し、謎を解明してきました。


善利組足軽組屋敷について

ここからは、彦根辻番所の会、渡邊弘俊さんに伺った内容をお伝えします。

足軽組屋敷(芹橋)は今から400年前、彦根城築城の際に城下町と足軽(下級武士)が住む町も同時期に造られました。足軽組屋敷には戦の時に彦根城や城下町を守るために多くの足軽衆が住んでいました。

彦根城と城下町

彦根城は関ヶ原の戦いの後、江戸(徳川)を大阪方(豊臣)から守るために築城され、有事の際の要所でした。彦根の城下町は今から400年前、彦根城の築城と共に計画的に作られました。当初は湖畔の磯山を予定していたといわれていますが、直継の代になって現在の彦根山に決定し、金亀町にある彦根山に築城され、完成した彦根城は3重の堀によって4つに区切られました。

【第一郭】お城・天守や表御殿などがある城郭

【第二郭】内堀と中堀の間に藩主の下屋敷(今の玄宮園・楽々園)や家老など、くらい(身分)の高い武士の屋敷を建てました。

【第三郭】城下町は中堀と外堀の間に武家屋敷(さむらいの家)と町屋が作られました。

【第四郭】外堀の外側には、城や城下町を戦から守るために足軽衆の組屋敷と町人の家も作られました。

足軽は鉄砲組1000人・弓組120人合わせて全部で1120人いました。さらに各組の手代74人の計1194人、約1200人がいました。

芹橋地区では、現在もその当時の町割りが残っていて、足軽屋敷が約40軒弱存在し、そこで今も人々が脈々と生活をしています。そのうち彦根市指定文化財の足軽組屋敷群は11棟(辻番所1棟と他の屋敷10棟)です。一地域でこれだけの足軽組屋敷が現存しているのは全国でも大変珍しく歴史的遺産として貴重といえます。

彦根藩の善利組足軽衆と足軽組屋敷

「足軽」とは「足軽く疾走する歩卒」の意味です。
戦国時代以降、戦の戦い方が集団戦に変わると、足軽は戦の主力として、重要な役割を果たすようになりました。
平時でも常に訓練などをして実戦に備えていました。

足軽組屋敷について

一般的に全国どこの城(藩)でも足軽の身分(下級武士)では長屋住まいが普通ですが、彦根藩での足軽の屋敷は木戸門と堀(土塀)がある、庭付き一戸建ての屋敷を藩より与えられて、多くの屋敷が建ち並んでいました。

〜辻番所と隣接する旧磯島家住宅の中の間取り〜
足軽屋敷の中の間取りは、平均で4間(4部屋・田の字型)です。
足軽屋敷はそれぞれ建て替えた時期などにより、少し違いはあるものの、基本的な間取りは似ています。足軽屋敷の一つの例として辻番所に隣接する旧磯島住宅を紹介します。

木戸門をくぐって家に入ると、

①土間・おくどさんなどがあり、ご飯などを焚く場所です。ここは現代で言うとキッチンです。

②「げんかん」は客人などの控えの間。

③床の間を設けた「ざしき」ここは現代で言うとリビングです。

④「だいどこ」は食事などをする場所。現代で言うとダイニングです。

⑤「納戸」は生活するところです。現代で言うと寝室です。

さらに旧磯島住宅には厨子という屋根裏があります。現代で言うとロフトで、荷物置き場です。

庭付き一戸建て

このように旧磯島住宅は現代の表現で言い換えるとするならば、屋根裏をロフトと考えればロフト付きの2LDKですね。門があり、プライバシーも守れて庭があり四季が感じられる家は、電気さえ通してしまえば、今でも家族で住めそうですね。実際に一般の住居として使われている足軽組屋敷もあります。ドラマなどで描かれる足軽は長屋暮らしが普通ですが、彦根藩では足軽の家にも小さくともこのような武家屋敷の体裁を整えていました。

善利組の町割り 〜どんつき・くいちがい〜

今でも芹橋の町には足軽屋敷が40軒ほど残っていて、その町並みは道幅が大変狭くその道も曲がっていて遠くまで見渡せません。とおりの角が少し曲がっている「くいちがい」。通りが行き止まりの「どんつき」になっていますが、敵が町の中に入ると、迷うように造られたからです。

すべては城を守るためだった!辻番所は見張り小屋

迷路みたいな道にすることでお城を守っていたのですね。彦根城築城時は大阪に豊臣軍がいましたので、内堀、中堀、外堀の他にも芹川が4番目の堀として機能していたとのこと。当時は辻番所という隅に窓のついた見張り小屋から足軽が2人ずつ24時間交代で敵を見張って守っていたということです。

このような背景を知れば彦根がもっと面白くなりますね。
 
このたび3Dで足軽組屋敷を見学できるようになりました。詳しくはこちらのリンク先へご確認ください。


(資料提供:彦根辻番所の会 渡邊 弘俊氏)
(資料提供:彦根辻番所の会 渡邊 弘俊氏)

(写真・文:橋本 佳苗)

辻番所・旧磯島家住宅
〒522-0087 滋賀県彦根市芹橋2丁目5−19
電話番号 彦根辻番所の会 23-3073(渡辺)
公開日 土日祝日 午前10時から午後4時
https://www.hikoneshi.com/sightseeing/article/tsujibansho

足軽組屋敷の特別公開2022
日時:10月15日(土)~16日(日) 10時~16時
場所:芹町2丁目地区一帯 彦根市指定文化財組屋敷