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初診:まだ酒を止めなくて良いか知りたい
アルコール依存症のクリニックに通いはじめました。
到着時点で、私は飲酒を止めるつもりがありません。診察室を出るときには気持ちが変わっていて、何度思い返してもやはり専門家はすごいと思うので、共有したくて書いておきます。
通院のきっかけは同居の恋人に深酒を止められて、怒りを覚えたことです。
20代から酒癖が悪く、30代に入り金銭と時間にゆとりが出来ると最大の趣味が飲酒になり、月1ペースで記憶をなくし、約束を破り、周りの方にからむ、大変はた迷惑な呑まれる人になっていました。
そんななかでも知り合った、気の合う人と楽しく暮らして、大した喧嘩もせず、本気で怒りを覚えることなんてなかったものが、酒についてとがめられると心底腹が立つ。私が好きなら酒癖も飲み込め。良いとこ取りの人と一緒に暮らせない。
しかし酒が抜けるとその怒りが今の生活どころか人生を壊しかねないとは分かるもので、なんとか、なんとか飲み方を変えなくてはならない、そう思いました。そしてそう思うのは人生で18回目くらいのことで、もう全然自分でなんとかできる気がしません。前々回に本気で反省したときにYouTubeで見ていたクリニックに向かうことにしました。
クリニックでは、まず看護師さんとの面談から始まります。ここで、10才くらいから35才の今までの人生を一通り、1時間かけて聞き取りして下さいました。
両親と兄弟姉妹・今一緒に生活しているパートナーがどんな人か、これまでの飲酒習慣とメンタル疾患の既往と、当時のライフイベントのエピソードを、聞き苦しい部分もあったに違いないと思うのですが、質問や相づちはあっても批判や感想はなく、忘れていたことを思い出しながら自分のこれまでがひとつながりになるまで聞いてくださいました。やはりこれは尋常のことではないと思います。ここまで時間をかけられないクリニックが多いと思うので、時間を割いてくださったことにも感謝しています。
そして診察室に入ります。まだ飲酒を止めるつもりはありません。
まずどういった目的で来院したのかの確認があります。
「まだ酒を止めなくてよいかが知りたい」
「栄養療法で酔い方を改善したい」
そういうことはやっていないのでお帰りください、となっても仕方なかったと思います。
ご回答は、
「制御して上手に飲めると思うなら、わざわざ受診しないはずで、本当はご自分でわかっていらっしゃるのではないですか?」というものでした。
まだ止めるつもりはありません。
ここから30分以上かけて、状況の聞き取りとアルコール依存の説明をしていただき、だんだんと、上手に飲むのは自分には難しい、節酒の難易度が断酒より高いことが分かっていきました。そして終盤の会話で閃きます。
私「次に失敗したらやめるのはどうでしょうか?」
先生「それだったら今やめた方がいいんじゃないですか」
先生「どのくらい失敗せずにすむと思いますか?」
私「1年もたないでしょうね。そしてその間に状況が悪化する」
先生「そうですね。悪化しますね」
書き出してみるとなんの事はない会話ですが、ここで私はエウレカしました。現況が悪化すると自分の口から出た言葉を聞いて、ここから適度に飲んでいるように見える期間があっても、トラブルのない飲酒をしているように見えてもそれは改善ではなくむしろ状況が悪化していることを納得しました。
最後に、なんのために禁酒したいか確認があり退室します。
診察室でも小1時間、時間をかけて診察面談していただいた結果、到着時は全然頭になかった、モチベーションが出てきていました。私の場合は50才時になりたい自分像に近付くために止めたい、でした。
いい目的ですね、と一言頂いて診察は終了しました。
少なくとも、飲酒を止める気になって診察室を出てこられました。
10日たち、薬の助けもあり、とりあえず禁酒ができています。体調が日に日に良くなっていきます。この体調の良さは、ちょっと手放したくないですね。
しかし、もう本当に一切飲めないのか。年に1回、長期休暇に旅先で、グルタチオン点滴等入念な準備をした上でなら適度に楽しむ飲酒ができるんじゃないか。
今後2週に1度通院し、1年程度で完結するアルコール依存についてのセミナーを受けるなかで、答えを出したいと思っています。
追記:薬の効果について
気分の上下を抑える薬を2種類、胃薬1種類、飲酒で体調が悪くなる断酒補助剤を1種類飲んでいます。
すぐに効くものではなく、効果に合わせて容量を調整するものだそうです。低用量から始めています。
・飲み始めてすぐ、末端の冷えが緩和された。背中の張り、こりがましになっている。
・常日頃あった頭の中心部でかんじる苦しさが3~5割り減っている。これは飲酒習慣がなかった頃も感じていたもので、痛くはないが苦しい、今回薬で減るものだと分かった事は本当にありがたいです。
・たぶん薬の作用だと思うのですが、視界が立体的になった。ニンテンドウ64からSwitchへの進化の半分くらいは変わった。風景の奥行きがまし、物体との距離感が分かりやすい。これなら公道を運転できる気もして、うれしい限りです。